【書評】「日本のお金持ち研究」は、これから就活を始める東大生におすすめ

1. 「日本のお金持ち研究」とは?

本書は、2005年3月出版の、橘木俊詔氏及び森剛志氏が著者である、金融その他の関係者の間では知られた名著である。

https://www.amazon.co.jp/日本のお金持ち研究-橘木-俊詔/dp/4532351359

本書の特色は、書店に並んでいるお金持ちになるためのよくあるハウツー書ではなく、年収1億円以上の人を対象に、経済学者が学術的にリサーチを行ったものである。

そして、日本のお金持ちの大半は、中小企業の経営者と医者(開業医)という事実を取り上げた。

日本人が想像するエリートというと、政治家、上場企業の役員、官僚、弁護士、医師などが思い浮かぶが、お金持ちという観点でみると、ステータス的なものとは乖離があるということだ。

だから、「成功したい」と考えた場合に、それは「お金持ち」になりたいのか、社会的なステータスを得たいのかで、手段は大きく異なるということだ。

2. 東大生は「お金持ち」になりたいわけではないのか?

学業的に最も成功した東大生で、法学部生の場合は、官僚か弁護士(司法試験)を目指すのが優秀層であった。

しかし、これらの職業は、「お金持ち」になれるかという観点からは本書の実証研究によるとズレているのである。

ところが、官僚の天下り先の減少・規制強化や、司法制度改革に伴う弁護士数の急増により、これらの職業の人気が東大法学部生の間で徐々に下がりつつあるという。

反対に、若いうちから高収入が狙える外資系金融機関の人気度が上昇してきているという。

とはいえ、日本の「お金持ち」の王道とも言える中小企業の経営者、今でいうと、ベンチャー起業家を目指す学生はまだまだ少ないだろう。

医学部も同様で、美容外科等の病院経営での成功を目指すよりも、大学教授や研究職を目指す学生が大半ではなかろうか?

このように、東大生は、「お金持ち」よりも社会的なステータスを目指すような流れになってしまっている。

東大生といえども、日本人なので横並び意識が強く、皆がそういう方向性を目指すと、自分もそれに追随したくなるのは理解できる。

3. 何故、中小企業経営者がお金持ちになれるのか?

何故、日本のお金持ちで一番多いカテゴリーは、上場企業ではなく中小企業の経営者なのだろうか?

①経費の存在

まず、考えられるのは、「経費」である。

所得が数百万円位の世界であれば、社会保険や年金・退職金完備のサラリーマンが有利なのであるが、所得が2000万円を超えてくると、この「経費」が徐々に効いてくる。

例えば、人気の外銀・外コンで年収5000万円だっとしても、手取りは2700万円程度である。そうであれば、年間貯金ができるのはせいぜい1000万円程度であり、年収5000万円をキープして、ようやく1億円が貯まると言ったレベルである。

他方、これが中小企業の経営者であれば、まるまる5000万円を役員報酬とはせずに、経費で高級車を買ったり、外食費に使うことができるため、事実上の手取りが異なってくる。

この点面白いのは、新車のランボルギーニの場合、約8割のオーナーが残価設定で法人名義で購入しているという。

一定の条件下、ランボルギーニでも経費で落ちるのである。

そして、表面的なオーナーの年収は3000~4000万円程度だという。

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他方、外銀・外コンで年収5000万円でも、手取り額を考えると、ランボルギーニ(約3000万円)は厳しい。

このように、所得が高くなればなるほど、経費というのは効いてくるのである。

②ストックかフローか?

もちろん、税務署も厳しいので、経費が使えると言っても、当然限度はあるし、サラリーマンの場合は、退職金や企業年金が手厚いので、それだけではそこまで差がつかないだろう。

もう一つ大きいのは、ストックかフローかということである。

サラリーマンの収入の厳選は給与収入である。

最近では、ストック・オプションもある程度浸透してきたが、既上場企業の場合は、それほどインパクトのある金額にはならないだろう。

他方、中小企業の経営者の場合、当然、経営者はオーナーでもあるので(100%)株主でもある。

すると毎年の役員報酬や配当だけでなく、自らの会社の株式を譲渡することによって、一気に多額の株式売却益を手にすることができる。

そして、この場合の税金は、非上場株式であっても、わずか20%であり、何と80%も手元に残るのだ。

これは、外銀・外コンのエリートには全くできない芸当である。

特に、最近は、ネット系ベンチャー企業の株式をIPOではなく、M&Aという形で売却するケースが増えてきているという。

IPOを目指していた結果、M&AでEXITすることになったというケースだけでなく、最初から、M&Aによる売却目的で起業をするという目端の利くベンチャー経営者も一部存在するようだ。

そうすると、IPOというレベルには全然到達していない段階でも、20代で数億円を手にする経営者もちらほら出てきている。

また、起業家ではなく、アフィリエイト収入を産み出すWebsiteを1億円以上で売却するケースも出てきており、ストック(資産)譲渡による収入の場合、フロー(収入)の収入とは違って、一度に多額のお金を得ることができる。

これは大きな違いである。

4. それでは、「お金持ち」になりたい学生はどうすべきか?

とにかく、早く、「お金持ち」を目指したいというのであれば、官僚や日本の大手企業のサラリーマンは真っ先に候補から外れる。

役員クラスでも数千万円位だからだ。

また、弁護士も避けた方が堅いだろう。

もちろん、渉外事務所の売れっ子パートナーになれば1億以上の年収も可能だが、それまでに20年以上かかりそうだし、弁護士数の増加を考えると厳しい道程である。

しかも、その収入はフローによるものであり、株式を譲渡することにより、一気に大金を手にするという手法が使えない。

そこで、今流行りの外銀である。

外銀の場合、IBDではなく、トレーダーを目指すべきである。

早く年収1億以上に到達できる可能性があるからである。

もちろん、自社の株式を売却することによる利益は作れないが、成功すると、それなりの「お金持ち」にはなれるだろう。

もちろん、国内系金融機関は対象外である。

他方、外コンは外すべきである。

15年以上かけてパートナーになっても、5000~6000万円位であろうか。

同じポジションであれば外銀の半額以下である。

外コンだと経営が勉強できるから、起業しやすいのではないかという考えもある。

しかし、外コンのクライアントは大企業であり、大企業向けのコンサルティングを提供している限り、自らベンチャー起業をするのに必ずしも適したキャリアではないという。

そうすると、もう、学生時代から起業を始めるとか、あるいは、起業の勉強をするために、従業員が10人も満たないような本当のベンチャー企業でアルバイトをして、そこで練習することによって、その後起業を狙うというのが一番手っ取り早いコースとなる。

もっとも、このキャリアについては、まだまだ確固たる成功パターンというのはできていない。

将来、ホリエモンのように、学生起業、或いは、ベンチャー企業経由起業、で成功パターンができると、将来、起業を目指す東大生が増えるかも知れない。

20年ほど前は、東大生で官僚や弁護士の人気が落ち、外銀・外コンに殺到するようになるとは想像できなかったので、将来実現しないとも限らないのである。