1. 豊田通商>=<双日?!
まず、豊田通商と双日はどちらが上だろうか?
何をもって「上」とするのは基準によるが、株価時価総額や利益においては、豊田通商が圧勝である。
例えば、株価時価総額(平成30年12月12日引値基準)でみると、豊田通商は1.29兆円であり、双日は0.51兆(5140億円)である。
他方、「総合商社」としての伝統やブランド的なものについては、21世紀にトーメンとの合併を契機に総合商社になった豊田通商よりも、鈴木商店、日商岩井の流れを汲む双日が圧勝のようである。
それでは、学生は、数字(当期純利益や時価総額)とブランドとのどちらを重視するのかというと、どうやら、今のところ、ブランドのようである。
2018年については、東大、京大、一橋から、豊田通商への入社はゼロ人である。
他方、双日については、東大3人、京大3人、一橋8人である。
また、面白いことに、早稲田と慶応で見ても、三菱商事から双日までの6商社については、就職者数で慶応>早稲田なのだが、豊田通商は、総合商社で唯一、早稲田からの就職者数が、慶応を上回っているのである(早稲田10人、慶応6人)。
2. MARCH、関関同立にとっては狙い目か?
内定者数だけみると、大手5社と豊田通商については、顕著な差異は見られない。いずれも数名というイメージである。
例外的に、豊田通商には、同志社から6名、立命館から4名というのが少し目立つ位である。
これは、新卒の採用者数が大手5社よりも少ないため、人数だけで見ると、あまり変わらないのであろう。
しかし、総合商社内定者数の上位5校にとどまらず、地元の名古屋大学から2名、関西系商社に強い神戸大学から0名、大阪大学から2名と、その他の有力国立からも多くは無い。
したがって、MARCH、関関同立の枠は特別多くは無いかも知れないが、競争の質においては、十分勝機があると推察される。
3. まず、歴史・沿革を見ておこう
会社のホームページの「会社情報」の「沿革」を見てみよう。
総合商社は、各社個性が強く、伝統もあるので、歴史・沿革・企業理念といった基本的な情報は必ず把握しておくべきである。
豊田通商は1948年設立で、何と言っても若い会社である。
他の総合商社は19世紀に誕生しているのと対照的だ。
だから、商社で必ず聞かれる「何故、双日でなく豊田通商?」に対しては、「新しさ、成長性」の魅力を強調するとわかりやすい。
そして、2000年代の個所を見ると、「合併や資本参画を活用し、自動車分野以外へも本格的にバリューチェーンを拡大」とあり、「自動車分野」がメインであることが確認できる。
トヨタ系列なので当然なのだが、自動車が強いのは当たり前で、それ以外の分野をどう強化していくかが経営戦略上の基本課題であることがわかる。
2000年にトーメンと資本・業務提携、2006年に合併という点は押さえておこう。このタイミングで総合商社扱いされるようになったのだ。
4. 決算説明会用資料を見てみよう。
直近のものはこちら。2019年3月期第2四半期 連結決算概要である。
ここで最初に見るのは、4pの連結決算概要である。
これは第二四半期、中間決算的な数字なので、通期予想を見ると、1400億円の当期利益を覚えておこう。
丸紅が2000億円、双日が700億円といったレベルなので、かなりの金額であることがわかる。
また、トヨタ自動車の生産台数が表に記載されており、トヨタの業績に連動するところがあるのだなと推察される。
重要なのは、6pの本部別の当期利益である。
豊田通商に限らず、総合商社の場合には、事業部(本部)毎の縦割り感が強く、商社によっては、事業部が違うと別会社ではないかと思うくらいの違いがある場合もある。
志望理由で「どういった部門で働きたいか?」といった点は必ず聞かれるので、自分が志望する部門と、それ以外の部門も把握しておく必要がある。
7本部に加えて「アフリカ」というユニークな本部があるのが特色である。
当期利益786億円のうち、「自動車」本部は108億円なので、意外に少なく見える。
しかし、「グローバル部品・ロジスティクス」「機械・エネルギー・プラントプロジェクト」の各本部にも自動車関連ビジネスが含まれているので、要注意だ。
やはり、何と言っても、自動車関連がメインだ。
他方、金属本部の利益は171億と、全体の2割以上のシェアを占めており、資源分野も重要であることが確認できる。
他方、食料・生活産業が26億円と圧倒的に少なく、「食料とか商品関連やりたいです!」というと、「この学生何もわかっていないな」と思われそうで要注意だ。
5. 2021年3月期 中期経営計画について
続いて、中期経営計画である。今年(2018年)は新社長就任の年であり、ちょうど、中期経営計画も一新された。
①キーワードは「変化」と「グローバル」か
資料の2p~6pの「社長就任にあたって」で、これでもかというほど出てくるのが「変化」と「グローバル」である。
何の「変化」かということであるが、4pを見ると、自動運転関連、EV、IoT的なテクノロジーと、グローバル化、D&I(多様性)による変化ということのようだ。
豊田通商は、とにかく決算は良好なので、さらに業績を伸ばしたいという意気込みだ。
このあたり、学生としては、「他の総合商社と比べて、伸び率、成長率が高いと期待されます。」といった点について、OB/OG訪問や面接で言及できるのではないだろうか?
それから、6pにあるように、ビジネス、ヒト、組織・仕組みのグローバル化を推進することで成長につなげようということなので、これは何らかの手を打つべきだ。
これだけグローバル、グローバルと言っているのに、「留学してません」「TOEICありません」「英語できません」では、「何やってたの?」と思われ、即落選であろう。
特に、体育会とか学歴(大阪大学、神戸大学)があるから、英語できなくてもいいかという考えは要注意である。
近年、体育会採用のシェアは総合商社では減ってきているようだ。
総合商社の求める人材(グローバル人材)が従来とは変わってきているのだ。
②重点分野は「ネクストモビリティ」と「アフリカ」
10~16pにおいて、2つの重点分野、「ネクストモビリティ」と「アフリカ」について言及されている。
この2つは2017年5月公表の中期経営計画から引き継いでいるので、本気度がうかがえる。
「ネクストモビリティ」は親会社がトヨタなので当然であろう。
豊田通商の内定を真剣に狙う場合には、トヨタも会社訪問すべきであろう。
そうすれば、否が応でも自動運転関連のビジネスや技術を深く勉強することができるからである。
また、「アフリカ」は面白いキーワードである。
アフリカのうち、どの国でどういった事業をやっているのか15pで確認しよう。
自動車関連(M)では、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、ケニア、ウガンダである。
R&Eでは風力発電でエジプトというのがユニークである。
また、L&Cではモロッコも登場してきている。
アフリカに赴任したいという学生にとってはチャンス大であろう。
その代わり、地域的に短期留学は難しくても、豊田通商の拠点がある国は旅行で訪問する等、何かしらのアクションはとっておきたい。
そうすると、本気度がうかがえるし、面接とかでも盛り上がるネタができることになろう。
③財務方針
18p以降は、財務等の定量的な計画・目標である。
ここは学生が苦手なところである。
ところで、ROE、Net DERはおわかりだろうか?
わからなければ、この程度は会計やファイナンスの教科書で理解しておくべきだ。
豊田通商には、外銀・外コン組とか、国内金融IBDコース志願者はあまりやってこないと推察されるから、反対に、ここでキッチリとした知識を披露しておくと印象に残りやすい。
ROEは、他の総合商社の目標は皆10%以上と変わらないが、豊田通商は「10~13%」という数字を示し、「13%」という上限をレンジで示したところが実は特徴である。
このあたりを取り出して、「豊田通商さん。凄いですね、ROEの上限レンジで13%という数字を出されてますね。この点に成長性とやる気を感じました。」といったコメントをすればよく見ていることがわかる。
ROEについては、伊藤レポートによると日本企業の目標は8%というのがあり、二桁あれば御の字という感じであったが、アメリカの上場企業ではもはや2桁では物足らず、15%位がスタンダードになってきている。
こういった点を踏まえて、13%が達成できれば、次は15%が狙える位置なので、このあたりは、話してみると面白い。
その他
トヨタの子会社で、自動車が強く、自動運転に加えて、「アフリカ」というキーワードを打ち出している。
従って、自動車やアフリカに関心がある学生はチャンスであるので、この分野については深堀しておきたい。
給与水準等は、双日と同じか、若干少ないくらいであるのが気になるが、新しさと成長性には期待できる。
東大京大、早慶にとっては魅力は落ちるのかも知れないが、文句なしの優良企業であり、面白い存在だと思われる。