私自身は外コンで働いたこともないし、内定を取ったこともない。
このため、外コン事情は特に詳しくないのであるが、元同僚の東大⇒外コンの人と話す機会があったので、最近の外コンの就活状況について聞いてみた。
東大生の外コン志望率は昔より随分高いようで、彼も後輩からいろいろと相談を受けるそうだ。
1. かつては、外コン内定は外銀以上に「無理ゲー」だった。
昔と言っても、10年以上前の話であるが、外コン(ここでいう外コンとは、マッキンゼー、BCG、ベイン等の戦略系に限定する)の採用者数は、非常に少なく、各社片手以内の状況であった。
入社試験・面接も独特であり、準備も面倒なので、外銀と外コンを併願するといったスタイルは見られなかった。
1990年代後半の就職氷河期においては、外コン1社の筆記試験で数百人が受験し、筆記試験通過者が数人という時代もあった。
また、リーマンショック直後もひどく、中途採用の話ではあるが、6次面接、7次面接と、気の遠くなるような厳しい採用プロセスがあった。
したがって、外銀勤務者から見ても、昔は、外コンに入るのはほとんど「無理ゲー」という状況であった。
2. リーマンショックによる外銀の相対的価値の低下と、外コンの採用大幅増に伴う、外銀・外コン併願のファッション化
ところが、リーマンショックによる外銀の相対的地位の低下と、それに伴う、外コンの相対的地位の上昇という動きがグローバルで発生し、また、日本においては、外コン各社の採用数が格段に増えた。
これによって、外コン内定は「無理ゲー」とまでは言えなくなったし、トップ学生といっても、日本人は付和雷同型であり、トップ学生が外銀・外コンを併願するようになると、「私も、私も、」ということで、近年は、外銀・外コンが一つのファッションになってしまったようだ。
(さらにひどいことに、外銀・外コンの内定を持っているにも関わらず、腕試し・コレクション的な動機から、総合商社(特に三菱商事)まで併願するというスタイルも確立されてしまったようだ。)
3. 外コンから内定をもらうまでの面倒なプロセス
ちなみに、元外コン(現外資金融のファイナンス)の彼から聞いた話だが、今でも相変わらず、外コンから内定をもらうのは面倒だ。
①ES段階
外コンの場合は、ESはさほど重視されないという噂もあるようだ。
コンサルなので、特に、結論⇒理由①、理由②、という書きぶりに注意すべきだが、ここでは、ある程度学歴フィルタリングが行われているようだ。
まあ、東大、慶応で外銀と本気で併願するような学生であれば基本的に通過できそうだ。
②筆記試験
最初の難関はここである。
大昔は、通過率1%という時代もあった。
今でもファームによっては10%位しか通過させないところもあるという。
採用者数の大幅増によって、ある程度通過しやすくなったが、まだまだかなりの難関だ。
市販の問題集等を使って、万全の準備をしよう。
③面接
ここでの課題は、いわゆる、フェルミ推定とケースである。
いずれも、対策用の書籍が販売されているので、十分準備をして臨むべきだ。
なお、一般的な面接(志望動機、学生時代に力を入れたこと等)がなされる場合もあるので、慌てず応対できるようにしたい。
④インターン・ジョブ
ここでは、とにかく積極的に発言する他はない。
外銀IBDの場合には、ここでの知識度よりも、人間性が見られたりすることが多かったりするのだが、外コンの場合は、発言内容がより重視されたりするようだ。
⑤最終面接
ここまで到達すると、内定も近い。
一発で内定が出る場合もあるし、その後、何回か呼ばれて再度面接がなされることもあるようだ。
このあたりになると、学生のチェック、質というより、採用側の人数調整的な段階であるようだ。
4. ダブル内定の場合、どうするか?
無事、外コンから内定をもらえたら、最終的に、どこを選ぶかを考えなければならない。
学生の価値観によるといえばそれまでだが、一つ言える重要な視点は、「年収重視なら外銀一択」ということだ。
外コンの年俸水準は内定難易度程は高くない。
最初の10年間は総合商社と変わらないか、若干、安い場合もあるだろう。
Principalレベルで2000万を越えると、総合商社を抜くことができるが、ワークライフ・バランスとそこまで到達できる確率を加味すれば、年俸水準は決して良くはない。
他方、外銀に行けば、30歳でVPになれば3000万円の世界であり、MDになれば、外コンの倍以上ということとなる。
(もっともこちらも相当厳しい道程だが…)
いずれにせよ、年収重視であれば、外銀に行くべきということは言える。
5. 外銀・外コンを全落ちした場合
①一番多いのは、外銀・外コン全落ちのセグメント
実は、人数的にも、割合的にも、一番多いのがこのカテゴリーだろう。
見栄を張って、外銀・外コンを併願したところで、全落ちするのがオチだ。
外コンを併願しなければならないのかについて、もっとも真剣に考えるべきはこのセグメントの学生だろう。
外銀にとどまらず、外コンも全落ちすると、仕方がないとは言え、ショックであり、自信もモチベーションも失いがちだ。
したがって、東大法学部を余裕でストレート合格で英語も堪能という、特殊な学生ならいざ知らず、東大受験に失敗し一浪で慶応、「就活でリベンジだ!」という発想で外コンを受けるのは考え物だ。
外コンはお受験に長けた者が有利な側面があり、本当に自分のやりたいことをやるべきだ。
②大事なのは、次、どうするか?
外銀・外コンの併願を目指すような学生は、全落ちを機に、控えめにメーカーや地方公務員を目指すというようなことはしないだろう。
リベンジという意味では、総合商社が残された位か。
しかし、総合商社が本命の場合、プレッシャーが強く、なかなか本来の調子が面接で発揮できない恐れもある。
結局、自信を回復する意味でも、また、総合商社の勉強をするという意味でも、ベンチャー企業、メーカー(例えば商社の取引先)等の内定を取りやすいところからステップアップするのがいい。
それから、総合商社に準じる本命としては、国内系証券会社のコース別採用だろう。
また、穴場でおすすめなのが国内系運用会社だろう。
国内系証券会社のIBDとか国内系運用会社(運用部門)に入れば、将来、外銀に転身することも十分可能である。
ただ、総合商社も国内系証券会社のIBDも相応の準備が企業毎に必要となるので、時間も労力もようすることとなる。
以上より、よほど自信が無ければ、自分が東大或いは慶応だからというだけで、見栄で外銀・外コンを併願するというのはあまりおすすめでない。
手堅く、英語をマスターして、証券アナリスト資格を取って(簡単)少額でもいいから株式投資を実践するといった軸を作って、外銀と国内系コース別をメインで併願するというのはどうだろうか?
そうであれば、総合商社も「コーポレート部門のファイナンス職」一本で、軸のしっかりとした対応ができるはずである。
最後に
まあ、負け惜しみではないが(負け惜しみでも構わないが)、難関突破して外コンに行っても、毎日深夜まで年間600万円で働かされて、わずか1~2年でファームを去る者がどれほど多いことか。
そこで、金融プロフェッショナルに切り替えて、気分一新して国内金融と総合商社にフォーカスすればいいだろう。