「働き方改革」と言いつつ、クラウドワークスが儲からないことと、日本でフリーランスや副業が流行らない理由

1. クラウドワークスがようやく黒字化の見込みだが…

株式会社クラウドワークスは、クラウドソーシングサイトを運営している、この分野でのパイオニア的な2011年創業のベンチャー企業である。

2014年12月には、赤字であったが、東証マザーズに上場した。

クラウドワークという新しい働き方は、「働き方改革」の流れともマッチし、創業社長の吉田浩一郎氏が1974年の若手経営者であるため、投資家やネットビジネス界隈から注目されていた。

しかし、上場後も赤字が継続し、売上や粗利の絶対額も期待された程ではなかった。

ところが、2018年9月期において、2300万円の通期営業黒字を達成でき、創業以来初の営業黒字となった。

もっとも、2018年の売上高が66億円、粗利益25億円からすると、ごくごくわずかの利益水準であり、広告宣伝費を中心とする販管費をドラスティックに抑制できるものではなく、まだまだ、収益性においても売上自体の成長性においても、あまりインパクトのあるものではない。

2. フリーランスや副業は増え始めたか?

「働き方改革」で、副業の緩和だといっても、既存の大企業ではごくごくわずかのベンチャー系企業を除くと、

副業は基本的に禁止されている。

したがって、周りで副業をし始めたというサラリーマンには特に出くわさないのではなかろうか?

また、働き方として、企業に所属しない、フリーランスという言葉自体はかなり市民権を得てきたようにも感じるが、まだまだ例外的であり、また、イメージ的にもあまりポジティブな印象は持ってもらえないだろう。

フリーランスの場合は、一定以上の売り上げ(例えば年間2000万円以上)を稼げるようになると、サラリーマンと違って年収は青天井だし、自分のペースで効率的に働けるし、経費が使えて実質手取りを増やすことができるというメリットがある。

しかし、年間の売り上げが500~600万円相当だと、社会保険も全て自分で対応しないといけないし、退職金も無いし、年金も無いという状況であり、実質年収は底辺のサラリーマンと変わらなくなってしまう。

そういうことを踏まえると、基本、そこそこのサラリーマンはフリーランスなど目指さないだろう。

3. フリーランスと副業が流行らない本当の理由

①そもそも、やってみたいと思ういい仕事が無いから

いろいろな理由があるのだろうが、いい仕事が無いから、わざわざ、フリーランスや副業をやってみたいとは思わないというのがあるだろう。

いい仕事というのは、

・報酬が高い仕事、

・報酬はそこそこでもやりがいがある、将来のスキルに繋がる仕事、

であろう。

しかし、クラウドワークスに限らず、ランサーズ、その他のサイトを見ても、単純な機械的な誰でもできる仕事で低報酬の仕事が大半であろう。

ライティング、イラスト、アンケート、アプリ作成、データ収集と、仮に、仕事を辞めて専念したとしても、月にせいぜい20~30万円レベルの仕事が大半だ。

それだと、業務時間外に飲食店でバイトをしたり、空いている時間に、家庭教師でもした方が割がいい。

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS80447/d6a91b64/bdf2/4bfc/b1ac/bbb24f1ba178/20181114152640891s.pdf

特に、クラウドワークスの決算でそれを象徴するデータが、こちらの23pの「一人当たり契約額(ARPU)」である。

クラウドワークスの今年度の総契約額101.2億円を、

契約ワーカー数(UU) × 一人あたり契約額(ARPU)に分解すると、

22.8万人 × 4.4万円となり、

なんと、一人当たり契約額は年間ベースで4.4万円にしかならないということだ。

ということは、サイトを通じて契約した人は、年間で見ると、単価の安い仕事を何回かやってみて、年間平均でわずか4.4万円しかかせげなかったということだ。

これでは、とても副業としての収入源にすらならない。

②クラウドソーシングでは、「いい仕事」が無い理由

これは考えてみたら当然かも知れない。

そもそも、発注者からすると、アウトソースに出したい仕事というのは、内製しなくても構わないノンコア、ビジネスのカギにはならない仕事だ。どうでもいい仕事ということもできる。

したがって、一定の質さえ担保されれば、誰がやっても構わない仕事であるので、アウトソース先を決める最重要ファクターは「安さ」ということになる。

そして、単純なプログラミング関係の仕事であれば、この手のビジネスの性ではあるが、途中に複数層の業者が、介在することも少なくなく、そうなると、中間搾取されてしまうので、最終的な実行者はものすごい薄給で仕事を余儀なくされることとなってしまう。

すると、そもそも優秀な業者、個人はそのような仕事には目もくれないわけで、スキルのある人たちはこの市場に入ってこない。

また、高度なスキルが要求さえる会社にとってのコアビジネスであれば、見ず知らずのネットの向こうの顔の見えない人たちに発注することはできない。

アマゾンの書評を信じて買った本が詰まらなかったり、食べログで高得点のレストランがまずかったりすることは許せても、コアの仕事で外すことは許されない。

従って、重要で高い単価を支払えるような仕事は、慎重に、信頼できる筋を探して見つけるので、このようなサイトにはおりてこない。

そうなると、安い仕事を競争力の無い時給の安い人達が奪い合う、こういった市場しかできてこないのだ。

4. 例外的なフリーランスの成功事例

ところが、中には、例外的にフリーランスで華々しい成功を収めているモデルもあるようだ。
assist-news.site

こちらは、NewsPicksなどでも取り上げられた記事であるが、このStockSunという会社は、社長以外全員フリーランスであり、平均年収1500万円以上という驚愕の実績である。

このStockSunが成功を収めているのは、先ほどのクラウドソーシング型ビジネスの真逆を攻めているからである。

StockSunには超ハイスペックなWeb関連の精鋭が集結し、質の圧倒的な高さを売りものとしている。

従って、単価も当然高いので、ターゲットとなるのはマーケティング的にコアとなるWeb関連ビジネスである。

そして、クライアントは業務の質が高いので、高い報酬を払うことを厭わず、また、コアビジネスについての

サービスなので、その話を聞きつけたり、紹介によって、次から次へと別のクライアントが新しい案件を持ってやってくる。

すると、腕利きのフリーランスのメンバーたちは継続的な高額の案件を取得するために頑張って質の高い仕事を提供し、それを見て、また別のクライアントが寄ってくる、といった正のスパイラルが生じるのだ。

もっとも、質の高いサービスと、高額報酬を払えるクライアントをマッチングさせることはそれほど容易なわけでは無いので、誰でも簡単に模倣することはできない。

このサービスはまだまだ成長中ということなので、新しい事業経営モデルとして注目されるところである。

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