1. プレゼンの前に「ゴール」を明確化しよう
本書では、いきなりプレゼンのスキルを解説する前に、プレゼンの目的、ゴールを明確化するよう強調している。
プレゼンが苦手な人に限らず、プレゼンになれている人も、意識しないとプレゼンのゴールが明確化できていないことがある。
就活や中途採用の面接の場合には、プレゼンのゴールは明確であり、「内定(オファー)をもらうこと」である。内定をもらうということは、相手(OB/OG、面接官等)が採用したいと思うことだ。
そして、相手(会社)が自分を「採用」したいと思うためには、相手が自分を採用すれば会社の利益になると思ってくれることであり、ここを明確に意識する必要がある。
そうすると、就活の場合、「自分がいかに体育会で頑張った」とか、
「自分が塾の講師のバイトで頑張った」という、プレゼンを延々としても、的外れであることに気づくはずだ。
何故なら、体育会とかゼミで頑張ったことは、会社が利益を出すために必要な人材であることの証明にはならないからだ。
もちろん、言いたいことはわかる。体育会やゼミの頑張りは、「従順であること」「我慢強いこと」「真面目なこと」等の性格面のアピールなのだろうが、そうどであるならば、その性格面によって、会社が利益を出すために貢献できるということをうまく伝えなければならない。
最初に、プレゼンの目的を明確化して、そこを出発点として対応できるかが、プレゼンの質を左右することは重要な点である。
2. 最初に結論、その後に理由というのはわかっているが…
プレゼンを組み立てる際には、最初に結論を言って、その後に「理由は3つあります。」という風に、理由付けを結論を持ってくるということは既によく知られた話である。
ピラミッド・ストラクチャーとかいう言い方もされたりして、これ自体は、どこのプレゼン関係の本にも書かれていることである。
ただ、これはわかっていても、実践できていない人が多い。本書でも書かれているが、日本企業の場合は、阿吽の呼吸で何とかなるというカルチャーもあって、不慣れな人が多い。
これを実践できるようにするには、練習するしかない。伊藤羊一さんは、これをとにかく強調しており、ソフトバンク・アカデミアで孫さんにプレゼンする際には、何百回と練習したという。
伊藤羊一さんは、グロービスのMBAコースの卒業生であり、今は客員教授もされているので、社会人の場合は、グロービスに通って練習をするというのも手である。
本を何冊か読んだだけでは、頭ではわかっていても、なかなかうまいプレゼンを実践できるようにはならない。
グロービスの講義(クリティカル・シンキングとかビジネス・プレゼンテーション)を受けると、他の受講生のプレゼンを聞いて、これはダメだなと気づいたりできるし、反対に、周りから問題点を指摘されたりする。プレゼンは他人から見てもらう方がいいので、こういう機会は利用したい。
https://gms.globis.co.jp/curriculum/bup/
3. 具体例で「イメージ」を与える:「右脳」と「左脳」を動かす
本書が面白いと思ったのは、この種の本は、ロジック面を強調するところがあるのに対して、本書は感情やイメージの大切さも強調している点である。
本の表紙の帯に書かれているところが、その要点であり、「結論」+「根拠」+「たとえば」で、相手の右脳と左脳を動かす、ということである。
この「たとえば」というところが、相手を説得するためのキーになるわけであり、面接時に際しては、予め練っておきたいところである。
4. 本書でもう少し知りたかったこと
本書で知りたかったが、残念ながらあまりふれられていなかった点は、著者の伊藤羊一さんが、いかにして、ソフトバンクの孫さんを魅了させたかというプレゼンの極意の具体的な内容である。
ソフトバンク・アカデミアのプレゼンコンテストを勝ち抜き、孫さんを魅了して、ヤフーアカデミアの学長にスカウトされた程なので、他の優秀層とは一味違う何かがあるはずなのだが、それについては特に書かれていなかった。
とにかく、練習を何百回としたということは書かれているが、プレゼンの内容とか、テクニックをもう少し知ることができればよかったと思う。
また、TEDの話にも少し触れられているが、おすすめのプレゼン等があれば紹介して欲しかった。プレゼンはイメージが大事なので、凄いプレゼンを何本か見ることができれば、良いイメージトレーニングになるからだ。
まとめ
本書は、プレゼンの本だけあって、とにかくわかりやすいし、読みやすい。
・最初のプレゼンのゴールを明確化する
・結論+根拠+たとえば、で相手の右脳と左脳を動かす
・とにかく練習が大事
といったポイントは一読すればすぐに残る。
1時間位で読めてしまうので、就活生や中途採用を考える人にはおすすめだ。
面白いと思った人は、グロービスの講義を受けて、実践力を磨けばいいだろう。