東大法学部で一旦就職してからの法科大学院は止めた方が良い。東大⇒長銀のある先輩のケース

司法制度改革に伴い急速に弁護士の収入が悪化したことは、かなり社会に浸透しているはずだ。

ところが、数々の規制緩和の効果か、法科大学院の志望者数が下げ止まったとのニュースを見た。

そして、東大⇒長銀で早稲田法科大学院(一期生)に入学して、結局、新司法試験に通らずに消えてしまったある先輩(Aさんとしよう)のことを思い出した。

1. 実は制度発足当初は、法科大学院は夢であふれていた

法科大学院の第1期生は2004年入学組であり、今では想像できないが、当時は期待にあふれ、物凄い人気であった。

東大卒の総合商社、銀行員、エンジニア、又は、医師、歯科医師、等既に相応の収入もステイタスもある成功者達が、仕事を辞めてまでして、法科大学院に押し寄せたのだ。

それまでは、弁護士資格は超プラチナ資格であり、合格率数%、東大生でも20人に1人しか通らない試験であり、社会人が合格することなど不可能な資格であった。

日テレの人気テレビ番組で「行列のできる法律相談所」がスタートしたのが2002年である。一般人に過ぎないのに、弁護士というだけでテレビに出てもてはやされるというのは妙な話であるが、当時はそれほど弁護士の存在は希少であったのだ。

入手不可能であったはずの弁護士資格が、法科大学院に行くと50%位の合格率で入手できる(そんな保証はなかったのだが)とあって、かつての夢を求めて会社を辞めてまで、法科大学院に殺到したのだ。

2. そもそも合格率50%のウソ

もともと、新司法試験の合格率の保証などなかったわけだが、何故か50%位は通してくれるだろうという希望的観測が流れていた。

実際、初年度(試験実施2006年)の合格率は48%であったが、その後は、40%、33%と低下し、3年後の2009年には27.6%と30%を割り込んでしまった。

その後は、現在までも20%台の合格率が続いている。

50%の合格率がその半分になってしまい、社会人の人達は年をとっている分、現役の学生達とガチで試験をすると不利なようで、ますます、新司法試験で苦戦をした。

その結果、当時あった三振制度(3回落ちれば受験資格喪失)によって、大挙してきたエリート達は、仕事を捨てて授業料を支払い、無給で勉強したにも関わらず、4~5年間とキャリアを棒に振ることとなったのだ。

3. Aさんは何故、長銀を辞めてまで弁護士になりたかったのか?

Aさんは東大法学部を卒業し、司法留年等をすることなく、当時の長銀(日本長期信用銀行)に就職した。Aさんは営業が得意であり、営業畑を中心に活躍していた。

ところが、1997~1998年頃の金融危機の時期、長銀は経営破綻をした。

もちろん、公的資金が注入され、当時の長銀の銀行員達が職を失うことはなかった。

Aさんは法務部門にいたわけではないが、他のエリート社会人受験生と同様に弁護士資格に憧れ挑戦を決意したのだろう。

東大法学部だと、周りにそれなりの数、弁護士になった同期や先輩がいるので、うらやましかったのかも知れない。

そして、法科大学院制度が始まる前年(2003年)に、当時かなりの難関であった早稲田大学法科大学院に合格したので自信もあったのだろう。

Aさんは長銀の管理職に就いていたので、年収は当時1200万位はあったと推察される。

法科大学院は全日制なので仕事を辞めるのは前提で、年収は当然ゼロだ。

そして、授業料(3年間で400万円弱)を払い、その間の生活費も捻出しないといけなかったわけだ。

ストレートで合格していたと仮定しても、3年間の授業料と、5年間(試験と修習期間も含む)の給料分を合わせると、ざっと、6000万円くらいになるが、Aさんは営業力に自信があり銀行員としてのキャリアもあるので、弁護士になりさえすれば、年収3000万、いや、あわよくば1億円以上も夢ではないと考えていたのであろう。

相応の社会的地位がありながら法科大学院で勝負をかけた社会人達は、それ位の夢見てもおかしくはない。

4. 仮に合格していても元は取れていなかったわけだが…

もっとも、Aさんが仮に合格していたとしても経済的には元は取れていなかったと思われる。東京は飽和状態であり、栃木、茨城あたりの北関東エリアに行けば何とか1000~1200万円くらいは良ければ稼げるといった状況だ。

銀行(今は新生銀行)で働き続けていたとしたら、年収は1500~1600万位はあったろうし、退職金や年金もある。

それでも、合格しさえしていれば、「弁護士」という憧れの資格は入手できたので、何らかの納得感はあったかも知れない。

しかし、現実的には通らなかったので、全く何にも残らなかった。

5. 年収・ステイタスのある人ほど安易なキャリア・チェンジは危険。十分に計算しよう。

無謀と思われるチャレンジでも、失うものがなければ簡単である。

薄給激務のブラック企業勤務であれば、会社を辞めても、何も失わないからだ。

ところが、現時点で安定高給の大企業の管理職についていれば事情は異なるわけで、一旦会社を離れると、将来うべかりし年収とか退職金とかは吹き飛んでしまう。

日本の場合、年功序列型賃金体系で、年をとると実力以上の既得権的な形で割高な給料をもらっているので、それを捨てると、ますます取り戻すのは困難だ。

今だと、流石に、一流企業を辞めて法科大学院に行こうと考える社会人は少ないだろうが、あり得るパターンとしてはベンチャーへの転職とか起業だろうか?

起業とかがやりたければ、年齢制限とかは無いので、失うものが無くなった時、要するに、定年退職後にでもやればいいのではないか?

人生100年時代とも言われているし、丁度いいかも知れない。

また、働き方改革により、副業が規制緩和されそうなので、すぐに、起業とかいって会社を辞めるのではなく、副業でいろいろテストをしながら成功可能性を見て堅く挑戦することもできる。

いずれにせよ、社会人なのだから、思ったらすぐ飛び込むのではなく綿密な計算をするべきだ。

なお、Aさんは十年位前は、行政書士をやっていたそうだが、今ネット検索をしても見つからないので、今は何をやっているか不明である。