1. 商社人気が過熱化する中、一橋の学生は、三菱商事と三井物産で苦戦している。
総合商社の人気は、外銀・外コンと並ぶ、就活ヒエラルキーの頂点であり、内定を得るのは、80~90年代と比べて格段に難しくなっているようだ。
一橋は伝統的に商社に強く、従来であれば、一般的な学生でも普通に、どこかの総合商社から内定をもらえた。
しかし、2019/3卒業生対象の就職者情報を見ると、一橋生は、かつては最も得意であったはずの、三菱商事と三井物産で苦戦している。
三菱 |
三井 | 住友 | 伊藤忠 | 丸紅 |
合計 |
|
慶應 | 29 | 41 | 39 | 25 | 21 | 155 |
早稲田 | 17 | 30 | 31 | 20 | 18 | 116 |
東大 | 19 | 13 | 21 | 12 | 8 | 73 |
京大 | 6 | 8 | 10 | 8 | 5 | 37 |
一橋 |
7 | 8 | 10 | 7 | 6 |
38 |
(出所:AERA2019.8.5号 「主要50大学の人気企業への就職者数」より外資系金融キャリア研究所作成)
2. 三菱商事と三井物産の内定者の状況
上記のデータを見ると、他の総合商社と比べて、一橋大学は、特に三菱商事と三井物産で苦戦しており、反対に、慶応が圧勝しているのが目立つ。
その原因としては、以下の2点が要因と思料される。
①外銀・外コン内定持ちの腕自慢の学生が余裕を持って就活する
シングルカルチャー、横並び同質社会の日本においては、学生の就活の志向も極めて同質性が強く、皆が行きたいところに集中する。
そして、偏差値教育の弊害と言えるのだろうが、中身はどうであれ、一番難しいから行きたい、内定取りたいというトップ学生も少なくない。
従って、既に外銀・外コン内定持ちの学生は、企業内容に興味があるのではなく、難易度が高いことを理由に、総合商社の中でも最高のブランドである三菱商事・三井物産(特に三菱商事か)のみを対象に内定を取りに来る。
<トップ就活生における総合商社の序列について>
https://career21.jp/2019-03-24-074220/
既に外銀・外コンの内定持ちなので、住商とか伊藤忠の内定は特に欲しくないのだ。
三菱商事の内定をゲットできれば、三冠(外銀・外コン・総合商社)を達成できるというコレクション感覚で狙いに来るのだ。
そういう学生は心理的にも余裕があるので自信を持ってリラックスして面接に臨めるので、優位に面接を受けられるし、また、採用側も外銀・外コンの内定持ちを好んで採りたがるので、ますます簡単に内定をゲットしてしまう。
となると、大学のレベルに比して、外銀・外コンの内定持ちが極めて少ない一橋の学生は、三菱商事(或いは三井物産)で苦戦している理由が何となくわかる。
他方、外銀・外コン内定者が多い東大と慶応は、三菱商事でキッチリと内定者を出しているのである。この点は、慶應からの内定者数が29人に対して、早稲田は17人と大きく引き離されており、生徒数が少ない東大(19人)よりも少ないことからもうかがえる。
②情報収集力の重要性~三井物産で苦戦する国立大学?~
これは一過性なのか、たまたまか、何とも言えないが、2018年度(2019/3卒)の統計を見ると、三井物産においては、一橋に限らず、東大・京大も苦戦しており、国立勢が相対的に苦戦しているようである。
これは、三井物産に限った話ではないが、国立大学は受験における勝者であるというプライドと過去の就職の強さから、ガツガツと情報収集するのをカッコよいと思わないのかも知れない。
一橋の場合、立地的にも都心から離れているので、他の大学よりも情報戦で不利な面もあるのかも知れない。
近年、総合商社の採用も、従来のように大学名や体育会というコンサバな側面だけではなく、グローバル人材を欲しているようだ。したがって、それに合わせた就活対応をするべきなのに、一橋の学生は変化に十分に対応しきれていないのではないだろうか。
(もっとも、2019/3卒の、一橋から三井物産への内定者数は8名であるが、前年度の4名からは増えた。さすがに前年度は悪すぎたのかも知れないが…)
3. 今、総合商社から求められるグローバル人材とは
①何故グローバル人材が求められるのか?
この理由は極めてシンプルであり、日本の国内市場が少子高齢化に伴いシュリンクしていくことが明白であり、外に出て行かないと稼げないからだ。
かつて日本が最強で、自動車と並ぶ二枚看板であった電気業界は、シャープ、三洋、東芝、NEC、富士通に見られるように、どこも外国勢に負けており、顧客である国内系メーカーは厳しい状況にある。
そして、将来も成長が見込まれる、製薬とかITについては日本企業の国際競争力は高くない。
これは、実業だけに限らない。
有価証券投資においても、国内企業はゼロ金利で、株式市場も大幅な成長は期待できない中、海外有価証券市場に投資をしていかないと、良いパフォーマンスが得られるわけがない。
実業でも金融業でも、海外で稼ぐためには、語学力は当然として、異文化の外国人と現地の法令・商慣行に従って、ビジネスを展開していかなければならないのだ。
②外銀・外コン・総合商社は、グローバル人材を巡っての採用
学生から最も人気がある外銀・外コン・総合商社というが人気なのは、高給が支払えるからであり、その前提として、グローバルで稼げているからという事実がある。
採用側からすると、グローバル人材を巡っての取り合いであり、学生達はそのルールに則って競争をしているのである。
総合商社の場合は、伝統的な日本企業という一面もあるので、グローバル人材を欲しているという面を、一橋の学生はとらえきれていない可能性もある。
③グローバル人材に問われる資質とは?
それでは、グローバル人材に具体的に求められる資質とは何かということであるが、例えば、以下の3つのポイントが指摘できるだろう。
(i) 英語力
(ii) リーダーシップ
(iii) 情報収集・分析能力
これに関する対応法については、以下で述べてみる。
4. 総合商社(特に難関の三菱商事、三井物産)から内定を得るための、グローバル人材になる方法
①英語力について
従来商社は、英語については入社してから鍛えるので、就活時点では英語力は不要という扱いであった。
しかし、最近の商社人気により、トップ校の中での志願者数が増加することに伴い、学生のスペックがどんどん向上している。
従って、そもそも英語力が無いと、他の学生と比べて見劣りするので、理想を言うとTOEIC900、それが無理なら860、最低でも800は取って英語力で×をもらわないようにしなければならない。
本気で商社に行く気があるのであれば、どっちみち、英語は学習することになるので、受験勉強の勢いで、1年生のうちに、TOEICは作っておくことだ。
早慶とかで、本気で総合商社を狙う学生は、大学1年生どころか、高校生のうちから、交換留学の可能性とかも視野に入れて、大学入学後はキッチリと留学に行っているのである。
本来であれば、短期留学でもすれば、いろいろとネタもできるのであるが、費用の問題とかもあるだろうから、せめてTOEIC位はやっておくべきだ。
②リーダーシップについて
英語力と言うのは、グローバルビジネスを展開するうえで、必要条件ではあるが、必要十分条件ではない。
何故なら、ビジネスなので、英語を使って、周りの人々を一つのゴールに向かって動かしていく能力、要するに、リーダーシップが求められる。
そして、商社の場合、既存のグローバル・ネットワークを使った上で、新しいビジネスを作って稼いでいかないと行けないので、ゼロから1を産み出す創造力が求められる。
従って、ありがちな以下の行動はあまり評価されない。
・海外の単身ヒッチハイク旅行
⇒単なる個人行動に過ぎないから。
・英語ゼミ、英語サークルの幹事としてみんなをまとめた
⇒既にある団体を引き継いだだけなので、創造性がない。(誰でもできる)
このため、リーダーシップという点では、必ずしも英語を絡める必要は無く、小さいビジネスでもいいので、起業体験などがあると、説得力を増してくる。
一橋生は、慶応SFCのように、起業をしようという学生が少ないので、その意味でももっと頑張らなければならないだろう。
③情報収集・分析能力
商社と言うのは、人しかいない。グローバルにちりばめられた情報が資産である。
グローバルの情報網を駆使して、儲かるところに、投資をするというのが商社のビジネスモデルである。
したがって、情報を収集し、それを分析する能力が高い人材が本来求められるはずだ。
従来は、そこまで競争が厳しくなかったので、そこまで神経質になる必要は無かったのだが、近年の難化に伴い、情報収集・分析面においても高度なものが要請されるようになっている。
このため、Webで詳細に開示されている情報は隈なくチェックして、叩き込んでおくべきだ。
5大商社と言っても、ビジネスポートフォリオや経営戦略は大きく異なるので、それを知らないで就活に臨んでも撃沈するだけだ。
〇資源ビジネスの割合はどれくらいか、
〇非資源ビジネスの内、主たるビジネスは何か、
〇経営戦略として、どのような分野に注力しているのか、また、その理由は?
〇直近実施した大型買収案件の評価は?
といった点を十分研究した上で、質疑応答できるレベルにならないとライバルに勝てないだろう。
一橋の場合、キャンパスが国立なので、情報から隔離される点はあるのかも知れないが、東大とか慶応の友人と接触して、意図的な情報収集に努めないと勝ち目はない。
まとめ
一橋の学生は、外銀・外コンにチャレンジする学生が少ない。
また、起業を目指す学生も多くない。
そうした中、商社が求める人材も変化してきており、従来と同じ対応では、特に、上位2社ともいえる三菱商事と三井物産から内定を取ることは難しくなってくる。
英語ができないというのは、もはや話にならない。
国立大学なので、就活対策について学校は何もやってくれないだろうし、先輩たちも昔の感覚でアドバイスするのかも知れないが、時代は変化しているので、積極的に情報を収集し、行きたい企業の内定を取れるよう頑張るしかないだろう。