東大、早稲田、慶應の学生も要注目?キーエンスの就活、年収、転職について

1. 意外に知られていないキーエンスの直近の年収事情

キーエンスは、給与日本一の企業ということで、トップ学生の間では知らないものは無いだろう。

しかし、東大、早稲田、慶応の上位層は、外銀や外コンを目指すのがデフォルトになっているのと、キーエンスのOBが周りにほとんどいないため、ほとんどノーマークであり、「給与が高いと言っても日本企業のレベルでしょう」という認識しかなかったのではなかろうか。

ところが、キーエンスのここ数年の業績の伸び(売上3000億・利益1000億⇒売上5000億・利益3000億のイメージ)によって、給与水準が驚くほど上昇しているのだ。(なお、2020/3期決算は、前年度から減益となったが、それでも売上高が5518憶円、営業利益が2776億円と依然として高水準である。)

<キーエンスの業績ハイライト>

https://www.keyence.co.jp/company/outline/finance-highlight.jsp

2. 700万スタート、2年目で1000万、30代で2500万

キーエンスの場合、初任給は20万円前半で普通の企業と変わらないが、年4回のボーナスの恩恵を初年度から受けることができる。

このため、1年目の年収が700万円程度となり、ほぼ外銀の水準である。

そして、2年目で1000万円に到達する。

国内系企業だと、総合商社で残業が多い人で3年目で1000万円到達が最速であるが、キーエンスはそれよりも早い。

違いはここからである。商社も代理店も1000万円にはすぐに到達しても、そこからの伸びが急に鈍化する。

しかし、キーエンスはここからも伸び続ける。

6年目で1700万円位と、この段階で、総合商社、野村證券のIBDコースを完全に抜き去る。

もともと給与水準が高くない外コンは全くついていけない。

さらに、キーエンスは30歳で2000万円程度まで行く。

日本企業は1000万円は早くても、とにかく、2000万円が遠い。

総合商社でも代理店でも早くても40代半ばだ。

そして、30代で管理職になると、2500万円以上となる。

こうなると、完全に外銀の水準だ。

3. キーエンスが東大、早稲田、慶応の学生から注目されない理由

キーエンスはここ数年で給与水準が上昇しているが、トップ学生からはあまりマークされていない。その理由としては、以下のものが考えられる。

(1)本社が大阪であり、東京で生活できない可能性が高い

キーエンスは大阪本社の会社である。(新大阪駅のすぐ近くの超高層ビルである。大阪駅・梅田エリアでは無いので、東京に行く際等、東海道新幹線を使う場合には極めて便利な立地である。)

<キーエンスの大阪本社>

https://www.keyence.co.jp/company/profile/map1.jsp

そして営業職の場合、さらに、地方に飛ぶ可能性がある。

東大や慶応の学生は、基本東京志向なのだろうから、大阪本社というのは何となく回避してしまいがちである。

(2)仕事がハードである

キーエンスは昔から、給与水準は高いが、仕事が厳しいということで知られている。

このため、一般的な学生からは回避されがちだ。

もっとも、商社や大手金融機関といった国内系企業の場合も、仕事がハードな側面はある。キーエンスは実はホワイト企業であるということは浸透してきているだろうし、そもそも、外銀・外コンのような異常なハードワークの業界を好む学生からすると、この点は問題にならないはずだ。

(3)特殊な業界であるため、転職力がつかない

キーエンスは、自動制御機器、計測機器、情報機器等を取り扱う企業であり、類似の業態の企業が少なく、特に文系の場合には、業界横断的に使える普遍的なスキルが身に付きにくいと考えられる。

要するに、それは転職力が低いということであり、キーエンスという会社を離れてしまうと高給は維持できなくなってしまうという不安があるわけである。

この点が、金融やコンサルという専門スキルが習得できる外銀・外コンとの決定的な差異であり、東大や慶応の文系の学生がキーエンスを志望しない最大の理由ではないかと推察される。

4. 就職先として、キーエンスを外銀と比較した上での魅力

東大や慶応の文系の学生が、就職先として、外銀と比較した上で、キーエンスの魅力について考えたい。

①内定をもらうことが十分に可能である

外銀の新卒採用枠は業界全体でも数百人レベルである。

他方、キーエンスはここ数年200人前後新卒採用をしているので十分な枠がある。

<キーエンスの新卒採用者数の推移>

https://job.rikunabi.com/2021/company/r791700026/employ/

そもそも、外銀の場合、東大や慶応の中でもやる気と自信に満ちた上位学生が集中し、東大でも10人に1人位しか内定をもらえない。

外銀は狙ったところで、全滅になる可能性は高いのである。

他方、キーエンスは採用実績校の学校名を見れば明らかだが、トップ学生がほとんど行くような企業では無かった。

したがって、外銀を目指すような学生であれば、真面目に対応すると十分に内定をもらえる可能性が高い。

キーエンスは、ハードワークを厭わない学生が好きだからだ。

②給与水準がほとんど外銀並みであり、まだまだアップサイドがある

上述したように、20代の給与水準がほとんど外銀並みとなってきている。

特に注目されるのは、2000万円の壁をつきやぶっている点である。

外銀でも年収2500万円以上が狙えるのは、VP以上というのは一つの目安であり、キーエンスはほぼその水準になってきている。

そして、外銀の年収はまだまだ将来減少していく可能性があるのに対して、キーエンスはまだまだ上昇していく可能性が高い。

もっとも、キーエンスが外銀に敵わないとしたら、上のクラスの年収であろう。

外銀のベストシナリオで35歳でMDになると年収は5000万~1億円のレンジが期待できる。他方、キーエンスだと、30代ではせいぜい3000万円位であろうから、

上は今のところ外銀に軍配である(もっとも、MDは厳しい途だが)。

③生存確率が外銀よりは遥かに高い。

これは外銀と比べた場合の、キーエンスの大きなメリットだ。

キーエンスはハードワークで離職率も高い特殊な日本企業として知られているものの、外銀と比べると生存率は遥かに高い。

そもそも、外銀だと3年後にアソシエイトに昇格する時点でどれほど残っているだろうか?半分もいないのではないだろうか?

そして、7年目のVPに到達できるのは何割だろうか?

フロント職であれば、いいとこ、2~3割ではないだろうか?

キーエンスの場合は、日本企業であるので、30歳で7割位残っているのではないだろうか。

④ワークライフバランスがキーエンスの方が良い

キーエンスはハードワークで知られる会社で、「30歳で家が建ち、40歳で墓が立つ」と揶揄されるくらいであるが、実際は、朝7時台に出社し、夜9時位には帰れるイメージで、土日は基本的には休める生活だという。

これでも、他の日本企業と比べたらハードなのだろうが、9時から夜中まで、土曜日は出勤の外銀と比べたら、遥かにマシである。

キーエンスの場合、ワークライフバランスが充実している間に、将来のキャリアを磨くことが可能となるのだ。

5. 結局、最大の課題は転職力をどう考えるか?

以上より、給与水準は、商社やマスコミを完全に抜き去り、ライバルは外銀のみという世界に突入している。

そして、クビになるリスクやワークライフバランスの点でも、外銀よりは全然恵まれている。

しかし、転職力の問題は解決しない。

キーエンスの職歴では、ファイナンス力とかコンサル力といったプロフェッショナル・スキルが習得できない。

もちろん、定年までとは言わなくとも、50歳位まで働けたら転職は特に気にする必要は無いのだろう。

また、20代であれば、キーエンスで働いていた実績があれば、ポテンシャル採用で国内系の大手企業ならどこでも雇ってもらえるだろう。或いは、給与水準が高い外資系IT企業においても、キーエンスの法人営業のスキルがあれば、IT系企業での勤務経験が無くても採用される可能性はあるだろう。外資系IT企業の場合には、営業成績次第では30代で2000万円を超える年収を実現できる場合もあるようだ。

ただ、問題は、働き盛りの30~40代でキーエンスを辞めることになった場合、どの業界にどのポジションで行けるかということだ。

年収2000~3000万レベルをもらえる企業を探すのは難しいし、減るにしてもせめて1500-1600万円位は欲しいところだが、そういったポジションは見つかるのだろうか?

ここが一番気になるところだ。

これぐらいの年収水準でも税金が高いので、40歳まだ働けても、1億円を貯めることは無理なので、それなりの転職先が必要となるのだ。

6. 「営業力」を活かしたベンチャーか起業か?

結局、文系の場合、営業職がメインであるので、身に付くスキルは営業力である。

もっとも、金融のリテール営業のようなどぶ板営業ではなく、B to Bの法人営業スキルだ。

結局、こういったタフな法人営業スキルはいろいろなところで活かせるものの、現実的には、ベンチャー企業での営業職に転身するか、自ら起業するというのが一つの方策である。

しかし、ネット系ベンチャーは東京に集中しているので、大阪だと情報が収集しにくいし、コネクションも作るのが極めて困難だ。

以上より、キーエンスを選択した場合は、なるべく会社に残れるようにするというのが、勝ちパターンであり、途中で抜ける場合には、自ら起業できるような情報収集と人脈を築いておかねばならないということになる。

やはり、転職能力をどうするかというのが残された課題である。

なお、2020年5月時点において、コロナウイルスの問題が世界中の景気や採用状況にネガティブな影響を与えており、2021年8月時点でもまだ何時収束するのかは不明である。新卒については、22卒についてはほぼ計画通りに採用が進んだようである。しかし、23卒以降についても、全般的に新卒採用枠を増やすといった楽観的な見通しはあまり聞かない。

コロナウイルスの問題は、グローバルで生じており、ほぼ全ての業種に悪影響を及ぼすと考えられ、人気の外銀、外コン、商社も例外では無いだろう。そうなると、トップ層もキーエンスを選択肢として考えるようになり、23卒以降については急激な難化の可能性もある。このような不透明な状況下においては、商社、国内系証券IBD、アセマネ、MMデべといった従来からの人気・難関企業にますます優秀層が集中し、難易度は数年前よりも更に上昇している模様である。

そういった中、キーエンスの難易度が上昇しても不思議ではない。なお、キーエンスは独特の採用方式が知られており、YouTube等のSNSでも多くの情報が出回っている。既存の難関業種に加え、キーエンスの併願も考える際には、十分な事前の対策が必要となるだろう。

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