はじめに 選べる立場にある学生は限られた情報でどのような選択をするのが賢明か?
2007年に東大経済学部に金融学科が設置されて10年以上が経過した。学歴を重視する金融業界において、東大で、かつ、金融にフォーカスして学習したのであれば、本来、好きなところを選びたい放題で就職できるはずである。
しかし、トップ学生にとって最も人気の高い業種は外銀と外コンであり、いずれもOB/OGの数が少ないし、国内系金融機関と比べてディスクローズが良くない。
また、就活に関する情報メディアも、広く一般学生を対象としたリクナビとマイナビはそもそも東大生は当てにしておらず、せいぜい活用できるのは、「外資就活」と「ワンキャリア」位である。
これらも、クライアントである雇用者との関係で、あまり踏み込んだことは書けないので、東大経済学部金融学科の生徒と言えども、限られた情報の中で企業選びをすることになってしまう。
そこで、ここでは、もう少し踏み込んだ金融機関選択の検討をしてみたい。
1. 最初に、リテール営業は一切やりたくないという前提を確認する。
東大経済学部で金融学科を選択するということは、金融に関する専門的知識を習得し、将来金融のプロフェッショナルとしてキャリアを構築していくことを希望していると推察される。
しかし、中には、泥臭いリテール営業をあえてやってみたいとか、専門職よりも銀行や損保の企画・人事畑を経てとにかく出世したいと希望する学生もいるかも知れない。
そういった志向の学生であれば、リテール部門に配属される可能性がある、メガバンクとか大手生損保を訪問すれば、楽勝で内定が得られるだろう。
ただ、その場合留意しなければならないのは、出世には時間がかかり、年収2000万円に到達するのは40代後半になってしまうということだ。
また、保険会社に入社した場合、途中で気が変わって外銀に行きたいとなっても、中途採用で入社するのは(特に30歳を過ぎれば)著しく困難であることに留意する必要がある。
学歴の価値は、年をとるに連れて薄まっていき、反対に、職歴がどんどん重要になっていく。このため、自分はリテール業務を含めたゼネラリストでいいのか、年収は平均的な東大生よりも沢山欲しいのか、じっくり考えておく必要がある。なお、金融機関のリテール部門は東大生であれば回避すべきというつもりはない。何故なら、リテール営業、特に中小企業営業に強いと、M&A仲介とか、プルデンシャル生命の歩合営業で成功する途もあるからだ。中小企業のM&A市場が以前よりは整備され、後継者難の環境下、M&A仲介ビジネスは盛況の様である。このため、若くしてM&A仲介の営業で年収数千万円を稼ぐ成功者も出てきている。将来は、東大経済学部金融学科卒で、M&A仲介で大成功する営業マンも出てくるかも知れない。ただ、そこは厳しい歩合営業の世界であるので、誰でも成功できる途ではないことには留意すべきであろう。
反対に、リテール業務など一切やりたくなく、最初から金融の専門職に就いて人よりも多くの年収を志向する学生は、以下のキャリアを中心に選択していくことが必要となろう。
2. 政府系金融機関は、金融プロフェッショナルにあらず?
外資系金融機関の現職の者からすると、理解しがたいのが、学生の政府系金融機関に対する過大評価である。
就職偏差値、学生間の情報において、政府系金融機関のランクは外銀に準じた高さであるが、これは実態を反映したものとは言えない。
何故なら、政府系金融機関の年収はメガバンク相当であるし、転職力に大いに欠けるからである。
会社のネームバリューも転職エージェントの中で特段高い訳でも無いし、合コン偏差値的な俗っぽいステータスでも、総合商社、大手広告代理店よりも劣後する。
例えば、東大経済学部の場合、就職実績から見ると、日本銀行、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、国際協力銀行等がこれに該当する。
なお、外銀の中には、日銀出身者が散見されるが、彼らの大半はほとんどが海外留学経験者で、アソシエイトとしてポテンシャル採用で入社していることに留意すべきである。要するに、これは日銀の職歴を評価されたのではなく、ハーバードMBA、ウォートンMBA等の海外トップスクールの学歴を主として評価されたということなのである。
<日本銀行への就活、年収、キャリアについて>
https://career21.jp/2019-05-15-123211/
もっとも、日銀の場合、他の政府系金融機関よりも評価は高いようだが、だからといって、30歳を過ぎてVP以上で採用されることはまずないと考えた方が賢明だ。
ましてや、日銀以外の政府系金融機関の場合には企業プレミアムは無いので、要注意である。
もちろん、政府系金融機関の名前に主観的にバリューを感じ、そういった雰囲気での仕事が好きなのであれば、政府系金融機関を選択すべきだろう。
しかし、金融プロフェッショナルとして専門スキルを習得して高年収を狙いたいという価値観の場合には、メガバンク、生損保と並んで、政府系金融機関は最初に候補から外すべきである。
(農林中金、商工中金、信金中金も同様である。)
3. 外銀について
東大の金融学科の学生の本命は、やはり外銀であろう。
途中でクビやリストラのリスクは高いが、高い給与水準と専門的な金融スキルを活かした生き方はカッコよく、トップ学生が憧れるのも無理はない。
外銀のキャリアパス、年収水準、仕事内容等については、外資就活とかワンキャリアに参考となる情報があるので、そのあたりは最低限目を通す必要がある。
①マーケット(証券)部門かIBDか?
実は、リーマンショック前であれば、いわゆるトレーディングを中心とするマーケット部門の方が高給を得ることが多かった。
しかし、リーマンショック後はボルカールールによって、証券会社の自己取引が規制されたので両者の差は小さくなった。
それでも、マーケット部門(トレーディング、セールス)の方が生き残った場合にはIBDよりも高給が期待できる反面、IBDの方がツブシが効き、他業界への転職力は高い。
この点については、自分自身が興味がある方を選択すればいいだろう。
ただ、マーケット部門は東大・京大の理系が多く、数学的素養の高い者が多い。金融学科は経済学部なので、数学的な能力では理系と比べて不利な場合があるので、その点は要注意である。
②リサーチ部門はどうか?
2000年のITバブルの頃までは、(セルサイド)アナリストは花形の職種であり、特にTMTと呼ばれる通信・ハイテクセクターを担当するアナリストは高給であり、トップアナリストとなると1億円を優に超えていた。
しかし、その後の投資銀行業務への関与の制限という規制や、アナリスト業務のコモディティ化が進展し、業界内におけるステイタスがどんどん低下していった。
また、日本株自体がアップサイドが限られ妙味に欠けるため、アジア株の1つという位置づけとなり、ここ数年でも日本株業務を縮小している外銀が目立つ。
さらに、MiFID2という欧州の規制によって、ますます、アナリスト(日本株のリサーチ業務)の生存は厳しくなってきている。
このため、アナリストランキングがトップクラスのアナリストでも、4000~5000万位が関の山となってきており、リストラのリスクの高さを考えると、割に合わない仕事となってきている。
③経理(Finance)部門について
東大の金融学科の学生は、人事、コンプライアンス、オペレーションは基本的に志向しないであろうから、バックオフィスの中で、考慮するとすれば経理部門であろう。
なお、外資系金融の経理部門は英語ではFinanceという言い方をするが、IBDが関与するようなFinanceではなく、日本の「経理」とほぼ同じと考えていい。
ゴールドマン・サックス証券の場合であれば、経理(ファイナンス)でも、MDまで昇格すれば、トータル年収は5000万円程度となる。
しかし、MDまで昇格できるのは20年ほど先の話であるし、そもそも、そこまで到達できる可能性は極めて低い。
そこそこ順調にいけば、30歳過ぎでVPに昇格し、年収はボーナスを含めて、2000~2500万円程度である。
外銀の場合、経理を含むバックオフィスでも、クビやリストラはあって、リスクは相応にあるので、これをどう考えるかである。
外銀の経理といっても、国内系金融機関の経理と比べて、特別スキルの高い仕事を行っているわけではないので、ある程度リスクは高いが、そこそこ年収っも高いという、ミドルリスク・ミドルリターンというポジションである。
これを魅力的と考えるか、中途半端と考えるかは人それぞれである。
私としては、あまりおすすめではない。
④外銀における格差について
学生からはわかりづらいかも知れないが、「外銀」と一括りにされているが、その中での格差が拡がっていることに留意する必要がある。具体的には、米系のトップ企業と、欧州系大手との差が開いてきている。
上述したように、日本株業務の縮小、リサーチ業務の不振等により、どこの外銀もフルラインで業務を展開しているわけではない。
例えば、IBDといっても、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、ドイツ証券、バークレイズ証券、クレディスイス証券とでは、それぞれ、顧客基盤が大きく異なり、経験できる業務の質も違ってくることに留意する必要がある。
結局、IBDの場合は、個人の能力ではなく、企業の資本力・顧客網・グローバルネットワーク等によって案件を獲得するものなので、いくら頑張っても、会社の力が無ければよい案件に関与できないのである。
このため、IBDであれば、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガン、メリル・リンチ、UBSあたりまでしか対象としないというのも一つの考え方である。
(この点については、こちらの過去記事をご参照のこと)
4. 国内系証券会社のコース別採用について
東大の金融学科の学生からすると、本命は外銀ということになるのだろうが、何と言っても外銀は競争率が高く、東大でも10人に1人位しか採用されない厳しい世界である。従って、外銀を目指して十分な対策をたてたからと言って、必ずしも採用されるとは限らない。
結局、面接の場合は、面接官との相性や当たりはずれと言った運の要素が強し、体育会のコネのような不確定要素もあったりするからである。
このため、東大の優秀な学生であっても、外銀全滅ということは不思議ではない。
そこで、予め、外銀のバックアップ・プランとして次善の策である、国内系証券会社のコース別採用を視野に入れておく必要がある。
もっとも、国内系証券会社のコース別採用の歴史は短く、データが少ない。
そこで、中途採用の事例等を参考に考察したい。
なお、国内系証券会社のコース別採用については、外銀への就職が難化していることに伴い、外銀との併願が増え、近年急速に内定を取るのは難しくなってきているようだ。
<国内系証券会社IBDの難化>
https://career21.jp/2019-10-22-093310
①国内系証券会社のコース別採用(IBD又はマーケット部門)のメリットについて
国内系証券会社のコース別採用のメリットは、まず何といっても、「安定性」である。クビやリストラになるリスクは外資系と比べると格段に低い。
リーマンショックの際に、みずほ証券が大規模なリストラを実施したが、割増退職金の金額が基本給の3年分以上支払われる等、外資系のリストラと比べると遥かに恵まれている(外資系証券会社をリストラされる場合の割増退職金の目安は、基本給の6か月分が上乗せというのが多いパターン)。
また、外資系と比べると、ワークライフ・バランスが格段にいい。
もちろん、ハードワークではあるが、毎晩夜中までの勤務が当たり前で、土曜日も出勤するという外銀と比べると、遥かに過ごしやすい。
もともと、投資銀行業務におけるキャリアを積みたいものは楽をしたいということは無いだろうから、国内系証券会社のコース別採用は、無理なく続けられてキャリアを形成できるというメリットがある。
さらに、国内系証券会社の場合には、日本における強固な顧客基盤を持っている。
従って、大規模な案件、最先端の案件など、良い案件に関与し、スキルを磨ける機会が確保されている。
確かに、外銀の場合、グローバルに見ると国内系よりも顧客基盤は厚いが、日本国内に限ってみると、日本は支店に過ぎないので、十分な顧客基盤を持っているとは限らない。
②国内系証券会社のコース別採用のデメリット
まず、メリットの裏腹であるが、国内系の方がリスクが低い分、リターンも当然低い。外銀と比べると、給与水準は見劣りするのは否めない。
もっとも、国内系証券会社で待遇が最も良い野村證券の場合には、初任給の時点から700万円を越えるし、20代後半で1000万円に到達し、30前半でVPになると、1500~2000万円、EDになると30代で2500~3000万円とかなりの高給が期待できる。
(大和やみずほ証券でも、一般的なリテール総合職よりは高給であるが、2000万円を越えるのは難しい。)
また、企業によっては、グローバル案件が外銀と比べて見劣りするケースがある。
さらに、当然であるが、英語力については外銀の方が磨かれる可能性が高い。
③国内系証券会社のコース別採用の場合、どこがおすすめか?
もっともおすすめなのが、高給で、良い案件に恵まれ、安定している野村證券がおすすめである。もちろん、それは誰でもわかることなので、一番入るのが難しい。
そこで、押さえとしては、国内ナンバー2の大和と、みずほ証券或いはSMBC日興証券を併願することとなる。
SMBC日興証券は3大証券の一角なのだが、シティグループの傘下にあった時にはリテール業務しかやっていなかったため、ホールセール業務は近年再開したという弱みがある。この点、みずほ証券(採用はみずほFG)とどちらを優先するかは好みによる。
併願できる余裕があれば、併願すれば良いと思う。
④国内系証券会社から外銀への転職について
国内証券会社のコース別採用で入社し、スキルを蓄積し、更に上を目指したいと考えた場合には、中途採用で外銀に転職することも可能である。
但し、そのためには十分に高度な英語力を備え、外銀でもやっていけるスキルと自信が必要となる。
日本の場合、ゴールドマン・サックスやJPモルガンなどの大手は長年新卒からの採用システムが出来上がっており、中途で入るのは難しくなってきている。もちろん、外銀では新卒で入社をしても3年以内に2/3位は辞めてしまうので、その分、中途採用で補充することになる。国内系証券会社のIBDやFASから外銀IBDに転職することも可能であるが、ディスカウントをされることに留意が必要だ。例えば、国内系で4-5年の経験があっても、アナリスト2年目扱いとして採用されるということである。また、その後の競争も国内系よりは遥かに外銀の方が厳しいので、その点は転職に際してよく考えた方がいいだろう。
特に、VP以上での入社はリーマンショック前と比べて狭き門となっている。
しかし、国内系証券会社でそれなりの実績を積めば、中途での外銀への転職は十分狙うことが可能だ。この点は、同じ国内系といっても、メガバンク、生損保、政府系金融機関とは異なる点である。
5. 運用会社への就職について
①実は、一番おすすめの外資系運用会社
実は、金融業でスペシャリストとしてのキャリアを形成し、高収入を得たいと考えている学生に一番おすすめなのが、運用会社である。
その理由は、外資系運用会社の場合は、外資系証券会社には劣るが、それなりの高給が得られるということである。VPクラスで2000万円以上、SVP/Directorクラスであれば、3000~4000万円、MDクラスになると5000万円以上が期待できる。
また、更にアップサイドを狙いたければ、ヘッジファンドに行けば、数億円の年収も可能となる(もちろん、これは成功した場合であり、リスクは高いが…)。
そして、クビやリストラになるリスクが外資系証券会社よりは低く、年齢的にも定年までは別として、50代でも続けることが可能だからである(そういう人は業界に多い)。
また、勤務時間、ワークライフバランスという意味でも、外資系証券会社よりは遥かに恵まれている。
さらに、外資系運用会社の善し悪しは企業規模で決まらないので、小さくとも収益性が高くて競争力のある運用ブティックが数多く存在し、日本で活動しているEntityの数自体が多いからである。もちろん、新規参入の企業数も多く、日本拠点の起ち上げに関与できる機会も多い。
②外資系運用会社が「穴場」である理由
それでは、何故、外資系運用会社が、特に学生からあまり知られていないかというと、まず、新卒採用を行う企業と採用人数が、外資系証券会社と比べて圧倒的に少ないからである。
Wellington、PIMCO、Alliance Bernstein、インベスコ、シュローダーなどは基本的に新卒採用を行わず、中途採用がメインだからである。
このため、学生が入手できる情報は極端に不足しており、外資就活やワンキャリアのサイトを探してみてもほとんど情報がとれないことが確認できる。
また、外資系運用会社がマイナーな存在と思われる理由として、国内系運用会社の大半が銀行や証券会社の子会社であるため、格下の業界ととらえられがちだからである。
実際、証券系や銀行系の運用会社については、部長クラスは親会社からパラシュートで下ってくるので、生え抜き社員のモチベーションは上がらない。
しかし、外資系の場合には、独立系の会社が強く(ブラックロックとかフィデリティ等)、そのような問題は生じない。
③外資系運用会社に就職するには?
外資系運用会社は、ブラックロックやフィデリティ、ゴールドマン・サックスAM等の一部を除いて新卒採用をやっていない。このため、当初は国内系の運用会社に就職して、中途採用で外資を狙うこととなる。
良くも悪くも、外資系運用会社の場合は平均年齢が高く、外資系とはいえ、ほとんどのスタッフは日本人であるので年功序列も明らかに存在する。
したがって、あまり若くで転職を狙っても(25-26歳)、下積みが長くなるだけなので、30歳前後でVPで入社を狙うのが得策だ。
野村アセット、大和投信、日興アセット、アセットマネジメントOne、三井住友AM等、国内系の大手企業で経験を積めば、十分に外資系運用会社に転職できるチャンスはある。
④国内系運用会社に入社する際の留意点
※2018.11.21修正
野村アセットマネジメントはコース別採用を実施している。
大和投信はクオンツコースのみ別途用意されている。
大多数はコース別採用を採っていないのが現状である。
国内系運用会社の問題点は、コース別採用になっていないことだ。もちろん、銀行や証券のようにリテール営業のようなハズレは無いが、東大であれば、経営企画とか人事といった社内ステータスは高いが、市場価値・スキルが付かない部署に配属されるリスクがある。
そこで、ファンドマネージャー志望であることを強調すべきである。また、東大卒業者の配属に対する考え方は、会社によって違うだろうから、この点はOB訪問等で確認しておく必要がある。
⑤国内系運用会社への就職にあたって、東大金融学科の学生が考えておくべきこと
金融プロフェッショナルとしてのキャリアが積め、アップサイドも狙える運用会社の就職であるが、東大生特有の悩みに直面するかも知れない。
それは、友人、家族、自分自身の就職偏差値的なこだわりである。まだまだ国内系運用会社というのはマイナーな存在であるので、一般的にはあまり知られていない。学生の間には、金融機関の就職の序列というと、
外銀>政府系金融機関>コース別採用>メガバンク・保険(一般採用)>運用会社、
となっているのではないだろうか?
例えば、東大経済落ち・慶応経済の高校時代の知り合いから、「東大から国内系運用会社?俺は三菱UFJ銀行だ。やった逆転だ!」と思われたりしないか気にならないだろうか?
また、親御さんからも、「うちの息子は東大なのに、アセットマネジメントOne?聞いたこともないわ。就活失敗したのかしら?」と思われることを気にしたりするかも知れない。
そのあたりは十分理解できるので、将来の自分のキャリアの方向性と、運用会社へのこだわりについて良く考えておくことだ。
どうしても、他人の目が気になるというのであれば、ブラックロックとかフィデリティを狙うというのもあるし、証券会社のコース別採用を選択するという考えもある。
東大経済学部、かつ、金融学科で真剣に金融の勉強をしたのであれば、常識的な面接対応さえできれば、数年前までは大抵の大手の国内系運用会社から内定はもらえただろう。しかし、ここ数年、国内系運用会社の難易度が急激に上昇した。もともと、1社あたりの新卒採用者数が多くて20-30人、少ないと5-10人くらいなので業界全体で非常に少ない。そこに、外銀や国内系IBD志望者が参入してくると一気に難易度が上がってしまうのである。また、その少ない枠に、理系の院卒がクォンツ要員として採用されたり、留学生がグローバル要員として採用されたりするので、一般の文系枠は更に狭まる。このため、東大経済学部金融学科の学生と言えども、投資の勉強や十分な就職対策をした上で国内系運用会社に応募しないと内定を取ることは難しくなってきている。
6. 事業会社・ベンチャー企業への就職について
あえて、このコースを選択するメリットはあまり思い浮かばないが、長くなったので、別の機会に考察したい。大手ベンチャー企業に就職した者のキャリアについては、こちらをご参照ください。
<東大から大手ベンチャー企業に就職後のキャリアについて>
https://career21.jp/2018-12-10-091826
7. 金融プロフェッショナルを目指す上でやっておきたい3つのこと
外銀、国内系コース別採用、運用会社、のいずれを目指すにせよ、将来金融プロフェッショナルとして成功し、数千万円の年収を継続的に得るためには、学生の間に以下の3つのスキルを磨いておきたい。
①英語
証券にしろ運用にせよ、外資系が基本的にゴールになるので、高度な英語力は必須である。最初が国内系であれば英語を使う機会はあまりないかも知れないが、将来を見据えて早い段階で磨いておく必要がある。
もちろん、非帰国子女や非留学経験者の場合、流ちょうな英語を話せるようになっておかなければならないわけではない。
とりあえず、TOEIC900点を目標に学習するのが良い。TOEIC900は少々ハードルが高いかも知れないので、860点に到達すればとりあえずいいだろう。
②マーケットへの好奇心
外資系の場合、バックオフィスでもそこそこ稼げる可能性はあるが、多くの花形職種は「市場」「相場」ビジネスである。
したがって、株式、金利、為替、不動産、原油等、グローバルなマーケット動向に興味を持っておく必要がある。
バイトでためた20-30万円もあれば、ミニ株とか仮想通貨とかを小さく始めることができるので、おすすめである。少額でも投資をすれば、自然と相場を気にするようになるからである。
自分の投資と絡めて、ブログを付けたりSNSで情報発信できれば尚良しである。
なお、従来であれば少額自己投資の経験があれば、それだけで差別化できたのだが、難化した現在においてはそれだけでは不十分の様だ。単に儲かった損したレベルではなく、要因分析とか企業分析を投資理論に即してきっちりと語れるようにならないと加点されなくなってきているようだ。
③テクノロジーへの関心
実は、金融プロフェッショナルの場合、成功していてもテクノロジーに疎い人は少なくない。業種が規制業種であるとか、副業・情報発信が厳しく規制されているとか、理由はいろいろあるが、これからは、テクノロジーの動向には関心を持っておくべきだろう。
なかなか本で読んでもピンと来ないかも知れないので、冷やかしで、GAFAあたりを会社訪問してみてもいいかも知れない。
まとめ
文系の場合、プロフェッショナルとして最も高年収が期待できるのは金融業である。しかし、外銀は入社困難である上にリスクも高い。
他方、運用会社はマイナーであり、見栄が張れない反面で、期待できる収入水準や安定性は魅力である。
このあたり、いろいろとトレードオフがあるので、自分が真に追求したい価値観は何であるのか考えておく必要があろう。
また、どこに行くにせよ、英語は鍛えておく必要がある。
なお、2020年2月頃から、コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、経済活動に多大な影響を及ぼしている。そして、2021年5月時点でも、まだまだコロナの問題は収束する見通しがついていない。このため、特に23卒以降の新卒採用枠についても楽観視しにくい状況にある。しかし、仮に新卒採用での門戸が狭まったとしても、東大経済学部金融学科卒のポテンシャルがあれば、その後の第二新卒市場での逆転も十分に狙えるので、焦らず長期的な視点からキャリアを考えておきたいところだ。