1. 武蔵大学経済学部金融学科とは?
東京都練馬区江古田にある武蔵大学に、金融学科という大変珍しい学科がある。他に金融学科があるのは、東京大学経済学部と中央大学商学部位であろう。武蔵大学金融学科は1992年と最も古く、定員は2016年から20名増員し、120名となっている。
2. 武蔵大学経済学部金融学科の特徴について
武蔵大学自体が3学部のみで構成される小規模な私立大学であり、少人数教育とゼミによる指導を特徴としている。
①カリキュラムについて
金融学科は更に、金融コースと証券アナリストコースに2年次から細分される。
金融コースにおいては、お金の視点から家計や企業活動を総合的に管理・運営する方法んについて学習する。
証券アナリストコースについては、証券アナリストの資格取得をめざすコースである。卒業までには第一次試験(3科目)に合格することを目標としている。
②ゼミについて
武蔵大学は少人数によるゼミを通じての教育を売りとしている。ゼミは1年次から開催され、1年次ではマクロ経済環境を中心に経済学の教養的な学習を中心に行う。
2年次では、株式、債券等の金融商品の評価方法等の個別の学習を行う。証券アナリスト試験の科目対応したトレーニングを実践する。
3年次では、経済政策と金融政策を、現実の経済社会のニュースを題材に掘り下げた学習を行う。
4年次では、フィンテックやグローバル金融機関のM&Aや規制等の最新のトピックスも踏まえた学習を行う。
③難易度について
難易度については、法政や中央のやや下という位置づけである。しかし、一般入試枠が少ないことから、一般入試枠で合格するのは法政の商学部や中央の商学部よりも難しいのではないかという意見もあるが、それを示す証拠・データはない。
金融学科というカテゴリーを絞ったユニークな学科なので、競争率は高く、段階的に難化してきているようだ。
3. 就職先について
①金融学科の就職先の現状
金融学科は経済学部に属し、個別の就職先企業は学科別に開示されていないので、具体的な就職先企業はわからない。もっとも、金融学科からの金融業界への就職の割合は30%代であり、経済学科全体の20%代と比べて相対的に高くなっている。
経済学部からの金融機関への就職先としては、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、ゆうちょ銀行、三菱UFJ信託銀行が例示されている。数年前には、野村證券やSMBC日興証券、みずほ証券なども例示されいていたが、現状どうなったかについては開示されていないのでよくわからない。
他方、金融機関以外については、全日本空輸、東京ガス、京セラ、日本IBM、ソフトバンクが例示されている。
https://www.musashi.ac.jp/shuushoku/data/shuushokusaki/index.html
②一般職か総合職か?
就職先企業が一般職か総合職かについては、記載が無い。したがって、その内訳は不明であるが、金融学科の女性比率は約20%とあまり高くない。このため、一般職の比率はあまり高くないと推察される。
4. 就職先選定に関する考え方、戦略について
このようなユニークな教育内容を有する武蔵大学の金融学科であるが、就職先の選定については、戦略的によく考えたいものだ。
というのは、金融業界の場合は「学歴」が特に重視される世界である。せっかく4年間、金融について一生懸命学習しても、就職においては学校で勉強したことよりも、学歴が重視される世界であるし、採用後においても学生時代に勉強したことは資格(但し、公認会計士とか税理士レベル)でも取らないと考慮してもらえない。
そこで、金融学科⇒金融業という単純な思考ではなく、他に活かせる企業を幅広く検討すべきだろう。
①メガバンク、大手生損保は避けよ
国内市場の縮小、フィンテックの影響といったネガティブなニュースが絶えないメガバンクと大手保険会社であるが、何といっても、高い給与水準と安定性が魅力であり、入社難易度はまだまだ高い。
何と言っても、メガバンクと大手保険会社は超コンサバであり、学歴重視である。従って、学生時代に勉強したことは評価されず、結局、MARCHの少し下という位置づけで扱われてしまう。
また、入社できたとしても、配属は一生リテール部門であり、学生時代に学んだ証券分析とか金融機関の経営戦略といったものには縁が無い世界であり、がっかりするだろう。
②金融機関で狙い目は、運用会社とVC(ベンチャーキャピタル)
金融機関で狙い目は、運用会社とVC(ベンチャーキャピタル)である。この両業界は、4年間で学習する投資・証券分析に携われる機会が、メガバンクや保険会社よりも遥かに多い。また、知名度が低い分、入社しやすい状況にある。入社後も、リテールとマーケット部門との格差のようなものは格段に小さい。
従って、運用会社とVCを徹底的に研究するのが面白い。運用会社は、野村、大和、日興、三菱UFJ、みずほ(アセットマネジメントOne)といった大手から、T&D、岡三、さわかみまで会社数も多い。
VCについてはIT企業の子会社である独立系VCが数多くある。このあたりは、コネを作って入って行く方が得策であろう。
③事業会社のファイナンス、IR的なポジションを狙う。
実は、一番面白いのは、事業会社でファイナンス的な知識が要求されるポジションである。部署としては、財務とかIRになる。
しかし、伝統的な日本の大企業の場合、部門別採用じゃないし、学生時代勉強してきたからといって、その部署に配属してくれることはない。
そこで、狙い目はベンチャー系企業である。こういったところは、学閥は無いし、人物・スキル重視である。従って、ベンチャー系企業を広く狙うのがおすすめである。
5. 武蔵大学経済学部金融学科の学生が卒業までにやっておくべきこと
少人数のゼミを中心に4年間、金融について真面目に学習すれば、それなりの知識やスキルが身に付くはずである。しかし、社会人としての業務経験は無いので、それだけで有利なキャリア形成ができるものではない。
そこで、以下の2点を学生時代に、実践しておくことをお勧めする。
①ベンチャー企業でのアルバイト
従業員が10人にも満たないベンチャー企業でアルバイトをすれば、他では得られない多くの経験をすることができる。こちらのPassion Naviというサイトは、ベンチャー企業のアルバイトでトップクラスの情報量があるので、こちらから面白そうな企業を探してみてはどうだろうか?
②自分でブログとSNSを使って情報発信を行う
学生時代に、ブログを使って、マメに更新して、PVが数万件になると、就職でも十分アピールができる。体育会や帰国子女は結構いても、PV数万件というのはそれほど多くない。
金融学科の場合、仮想通貨、FX(マイナー通貨)、(テーマを絞った)株式について、ブログを続ければ、自分の勉強にもなるし、就活でもアピールできる。
最後に
銀行や保険は斜陽ビジネスかも知れないが、金融スキルについてはまだまだこれからも広く使える専門スキルである。学校での勉強だけでは不十分なので、自分でブログ・SNSを使って情報発信するとか、ベンチャー企業でどっぷりとバイトをすることによって、現実の社会に近づくことができ、就活でも有利に展開できるようになるだろう。