1. 一橋大学の主な就職先企業は、メガバンク、大手生損保、総合商社
YouTubeで、たまたま一橋大学の就職先というのを発見した。
ソースはこちら。
<一橋大学の2018年の主な就職先>
順位 | 企業名 | 人数 |
1 | みずほFG | 18 |
1 | 三井住友銀行 | 18 |
3 | 三菱UFJ銀行 | 17 |
4 | アクセンチュア | 13 |
5 | 日本生命 | 12 |
6 | 伊藤忠 | 10 |
6 | 住友商事 | 10 |
8 | トヨタ | 9 |
8 | 三菱商事 | 9 |
8 | 東京海上火災 | 9 |
2. 評価基準は、「年収」と「安定性」
一橋大学の卒業生たちの、就職先企業の評価基準は特定の業種・企業に極端に集中しており、大変わかりやすい。評価の基準は、明らかに「年収」と「安定性」だ。
まず、トップ10のうち3社は、総合商社だ。現在では、外銀、外コンと並ぶ就職人気先企業の御三家である。入社3年目で1000万近くになり、30過ぎで1500万円になり、40半ばで2000万円近くになり、そして、終身雇用が保証されている。
続いて、大手の生損保である、日本生命と東京海上日動だ。これらは、それぞれの業種の中でもダントツの業界トップ企業であり、給与水準も頭一つ飛び出している。当然、両社とも終身雇用である。
残るは、3メガバンクである。これらは、50過ぎで出向に出されるため、終身雇用は保証されていない。給与水準は、総合商社や日生・東京海上には劣るが、それらに準じる高年収である。
従って、一橋生は「年収」の水準と、「安定性」を基準に企業選びをしているということがうかがえる。
3. 異色なのは、4位のアクセンチュア
異色なのは、4位のアクセンチュアである。何故なら、給与水準は高水準ではあるが、「安定性」という点からは、総合商社、大手生損保、メガバンクよりは明らかに劣るからである。
基本的に、アクセンチュアはコンサル企業であるので、終身雇用に依拠した雇用体系となっていないからである。新卒入社した者は、どこのかのタイミングで遅かれ早かれ、転職することとなるのである。
しかし、「安定性」は無い代わりに、アクセンチュアには「転職力」がある。コンサルとしては、幅広い視点から経営戦略構築に携わることができるし、朝から深夜までの激務の中で競争にさらされ、タフなビジネスマンになれるため、普遍的に業種の壁を越えて転職需要がある。
アクセンチュアの前身のアンダーセン・コンサルティングの時代から、一橋大学からアクセンチュアにそれなりの数の卒業生が就職していたが、4位まで順位を上げるというのは、時代の流れではないか。
現在、トップ学生の間では、コンサル手イング・ファームの人気が年々高まり、マッキンゼー、BCG、ベインのビッグ3の外コンを頂点として、総合系ファームや独立系ファームの人気も定員も拡大しているのだ。
一橋の場合も、流行に乗って従来よりもコンサルティング・ファームを志向する学生が増えたということだ。
4. 課題は、「転職力」をどう磨くか?
4位のアクセンチュアを除いて、メガバンク、生損保、総合商社の場合の問題点は、「転職力」が無いことだ。
総合商社は、資源ビジネスを収益源としているので、あと数十年位なんとかなるかも知れない。東京海上と日本生命も、少子高齢化に伴う国内市場の縮小化、フィンテックの進展の脅威といった不安要素はある。しかし、両者ともに歴史は古く、長年トップの座にある企業だし、給与水準は減少するかもしれないが、こちらも何とかなるかも知れない。
一番問題はメガバンクである。ここは給与水準はそこそこかも知れないが、国内市場の縮小化とフィンテックの脅威の影響をモロに受けてしまう。合併に伴う余剰な経営資源がまだまだ多く、潜在的にリストラの不安は小さくない。
3社ともに既に大幅な人員削減計画を公表し、それによって、就職企業としての人気は下落しているのだが、人員削減策は自然減を中心としたもので、企業の抜本的な改革を示唆するような内容ではない。
まだまだこの先何が起こるかわからないし、むしろ、30年後も今と同じ給与水準が保てない見通しの方が高いのではないだろうか。
となると、将来に備えて「転職力」を付けるべきなのだが、メガバンクには転職力は無い。
今最も需要があるプログラミング・スキルが付くのはITの一部(一橋生は該当しない場合が多い)だし、英語が苦手な人が多いので、外資系にも転職できない。
また、証券会社と違って、エクイティ業務ができないので、株式・IR関係のポジションの競争力は無い。
さらに、典型的な規制業種であるので、長くいればいる程、カルチャー的にベンチャー企業に転出することは難しくなっていく。
実際、メガバンク出身者が転職市場で一番高く評価されるのは20代である。30代、40代と、年を取るにしたがって、転職は厳しくなる。
特に40代になると、異業種への転職はほぼ不可能になってくるし、できたとしても年俸は大幅なダウンとなってしまう。
もちろん、企業派遣で海外の有力校でMBAを取得し、帰国後マーケット部門や、法人部門で出世をする一部のエリートもいるだろうが、圧倒的にマイノリティである。
5. それでは、メガバンクの代わりにどこに就職すべきだったか?
思うに、メガバンクに就職することとした学生は、メガバンクが第一志望ではなく、消去法、或いは他の企業の内定がとれず、メガバンクになったパターンが多いのではないか?
もし、金融系でキャリアを積みたいというのであれば、「証券会社」或いは「運用会社」という選択肢がある。
「証券会社」のコース別採用は、競争が厳しく目指していても内定をもらえるとは限らない。
しかし、「運用会社」の場合には、それほど厳しいわけでは無く、一橋の平均的な学生であれば、国内系の大手のどこかから内定を得られる可能性が高いだろう。
また、JAFCOとこ大和企業投資のようなVCも面白いキャリアだと思う。
メガバンクというのは「安定性」があるようで無いのが問題だ。「安定性」に不安があれば、「転職力」を身に着けるしかない。
証券会社や運用会社は、メガバンクより「安定性」で劣るように見えるかも知れないが、「転職力」は高い。
したがって、もう少し注目してもいいように思われる。
6. 一橋の場合には、外銀に行く人数が少ないのも問題
一橋の問題点は、外銀に新卒で就職する人数が少ないことである。この点は、東大、慶応と比べて弱点と言えるだろう。
外銀は特殊で、採用人数が少ないため、就活における情報が少ない。従って、OB/OGからの情報が頼りであるが、OB/OGが少ないと、情報が入手できない。
そうなると、志望者が減るという負のスパイラルとなる。金融系のキャリアを積むのであれば、外銀が最強であるので、一橋の学生はもっと外銀にチャレンジすべきであろう。
7. 実は慶応の就職先も一橋の就職先と類似している。
同じYouTubeの動画で、慶応大学の2018年の就職先トップ10というのがあった。
慶応の卒業生は、理工学部や、文学部を含んでおり、また、一般職も含まれているため、一橋とは単純比較出来ないかもしれないが、トップ10は、メガバンク、大手生損保、総合商社の組み合わせである。
そして、偶然にもアクセンチュアが4位なので、この点でもそっくりである。
8. 結局、就職に関する情報の偏在、情報量の不足が問題ではないか?
本来、最初の就職先は社会人としてのキャリアの第一歩である。
新卒カードという貴重なカードを切るので、周りの動きを見て決めるのではなく、自分の特性や将来を自分の頭で考えた上で、戦略的に決定したいものだ。
しかし、いつの時代も、マクロ環境と周りの学生、人気ランキング、就職偏差値に振り回されて、思考停止に陥っている感がある。
ネットによって情報量が増えているのは間違いないのだろうが、リクナビにせよ、マイナビにせよ、結局、裏のクライアント企業の存在のため、表面的な情報ばかりで、本質的なところはOB/OG訪問をしないとなかなか見えてこない。
ワンキャリアのよう新しいメディアも登場してきているが、ES、面接マニュアル的なところが多く、なかなか判断力を形成するのは難しい。
学生としては、就活に関する情報不足やメディアの情報の偏在を非難しても仕方が無いので、なるべく視野を広めておきたい。
留学とか、ベンチャー企業でのアルバイト(就活の一環ではないもの)をもっと積極的にやった方がいいのではないか。
また、自分でブログ、SNSで情報発信をする、或いは、起業に挑戦するというのであれば、尚良しである。
外部環境の変化が激しく、従来のような終身雇用が保証されない時代においては、それに応じたい対応をしたいところだ。