ヘッジファンドとは何か?
うまく行けば年収は1億どころか、10億を越える可能性があるともいわれるヘッジファンド。投資をしている人なら聞いたことがある言葉だが、実際は何なのだろうか?
〇成功報酬型のファンドである
金融機関の用語集などを調べると、様々な投資手法を駆使して、相場の上昇・下落に関係なく絶対リターンを追求する成功報酬型のファンドといった説明がなされている。
「成功報酬型」というのがポイントであって、儲かったら儲かった分だけ、青天井で報酬がもらえるため、うまく行けばファンド関係者は桁外れの報酬が得られるという図式である。
〇大きいファンドから小さいファンドまで、いろいろある
運用の世界において、ファンドの大きさは、AUM(Asset Under Management)と呼ばれる運用資産の規模で表される。
ヘッジファンドの大手であれば、数兆円~数十丁円規模のファンドが、海外には存在する。例えば、ブリッジウォーター、ルネッサンス、ツーシグマ、ミレニアムなどが大手として知られている。
小さいファンドであれば、起ち上げ当初のものであれば10億円に満たないものもある。
ただし、ヘッジファンドは運用でいくら儲けることができたかという運用成績が全てであるので、必ずしも大きいファンドが優れているわけではない。
成功報酬がメインなので、AUMが大きくても運用成績が悪いと大した報酬は手に入らないし、小さい10億円のファンドでも1年で倍増すれば、数億円(例. 10億円の儲け×20%の成功報酬=2億円の成功報酬)の報酬が手に入るわけである。
〇情報が極めて少ない謎めいたヘッジファンドの世界
ヘッジファンドはとにかく情報が少ない。同じ運用会社であっても、成功報酬をメインとしない大手の運用会社の場合には、ブラックロック、アラインアンス・バーンスタイン、レッグメイソン、フランクリン・テンプルトン等は上場しているし、上場していなくても、JPモルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントといった公募のファンドを取り扱っている運用会社は情報開示の要請が厳しく、充実した公開情報が揃いやすい。
また、従業員の転職も普通の外資系金融に特化したエージェントが証券会社と同様に対応しているので、普通の転職エージェントと付き合えば、転職情報も入手できる。
他方、ヘッジファンドの場合には、非上場、非公募、小規模であるため、運用においても就職においても情報量は極めて乏しいものとなっている。
ヘッジファンドの年収
①年収は会社や運用成績によってピンキリ
ヘッジファンドは大きいファンドから小さいファンドまで様々であり、また、儲かっているファンドと儲かっていないファンドまで様々なので、当然年収も、様々である。
アメリカの事例だと、青天井の成功報酬なので、トップクラスは年収1000億円を越える、桁違いのスケール感となっている。ゴールドマン・サックスとかモルガン・スタンレーは足元にも及ばない。
日本でも、タワー投資顧問という清原達郎氏が創設した小さなヘッジファンドが大成功し、代表者である清原氏の年収は何と100億円であった(2004年は長者番付制度という高額納税者の開示制度があったので、公開された。)
これらは極端な成功事例かも知れないが、米国系の日本拠点で最も運用成績が優れたファンドマネージャーは10億円を何年間ももらっているので、トップクラスは10億円レベルであることは間違いない。
②ファンドマネージャー)の年収について
前述した通り、ヘッジファンドというのは成功報酬型の運用会社であるので、儲かれば儲かった分だけ儲けに比例してもらえるという世界である。
反対に、儲からなければ管理報酬という最低限度の報酬しかもらえないので、基本給(数千万円レベル)だけしかもらえないこととなる。
それどころか、ヘッジファンドの場合にはファンドマネージャー自身の資産もファンドに投資をする場合が多いので、損をした場合には、報酬は最低限しかもらえない上、自分の資産まで減少してしまうことになるのだ。
そういう厳しいヘッジファンドの世界だが、大雑把に言って、運用に成功すれば、ファンドマネージャーは数億円位のボーナスを得られることができる。
国内系の比較的穏やかな運用をするヘッジファンドの場合でも、ファンドマネージャーの年収は1億円を超える。
このため、ファンドマネージャー達の関心事・悩みは「税金」であり、税率の低い香港やシンガポールに引っ越す人もいるぐらいだ。
他方、運用がうまく行かなかった場合には、外資系の厳しい所だと本当に1年でクビになってしまう。
③ファンドマネージャーの見習い(アナリスト)の年収について
ヘッジファンドで運用従事者というのはファンドマネージャーだけではない。ファンドマネージャーというのは、何をどれくらい買って、どのタイミングで売るかという投資に関する全ての意思決定をする職種をいうが、ファンドマネージャーの見習い的なポジションでアナリストという職種がある。
アナリストは、ファンドマネージャーに投資情報をいろいろ調べて提供する職種で、20~30代の比較的若手が多い。そして、ファンドマネージャーから気に入られて無事昇格すると、アナリストはファンドマネージャーに昇格することができて、運用権限を持つようになるのである。
このアナリスト職の年収は、こちらもピンキリなのでレンジは広いが、ヘッジファンドの場合だと2000万円~6000万円とそれなりの高給である。
しかし、親分であるファンドマネージャーに好かれないとすぐにクビになったり、ファンドマネージャーに昇格できないので、リスクは結構高い職業と言える。
このため、いいアナリストを見つけるのは簡単ではない。
やはり、みんなリスクを嫌うので、普通に外資系運用会社で安定的に3000万円をもらい続ける方が人気があるのである。
④ミドル・バックオフィスの年収について
ヘッジファンドも組織であるので、運用をする人達ばかりではない。金融機関なので、法務・コンプライアンス職は必要である。また、経理・人事・総務を統括的に運営できるスタッフも必要である。
また、外部資金を運用する場合には、オペレーション、クライアント・レポーティングといったミドル・オフィスに該当する人たちも必要となる。
これらのミドル・バックオフィスの年収も、会社や会社の儲け具合によって様々なのであるが、米系の成功しているヘッジファンドの場合には、それなりの高年収である場合も少なくない。
例えば、経理やコンプライアンスの責任者であれば、3000~5000万円位はもらえるところは珍しくない。若手の場合であれば、1000~2000万円位が目安である。
他方、ヘッジファンドによっては、ミドル・バックオフィスにはお金をかけたくないというところもあり、そういうところだと、シニア・ポジションであっても、年収2000万円に満たないところもある。もちろん、そういったポジションは不人気である。
ヘッジファンドへの就職について
①コネによる就職が多い
基本的に、日本で創業しているヘッジファンドの場合は、外資系ヘッジファンドの日本拠点であっても、独立系であっても、従業員数は10~30名の小規模のところが多い。従って、運用従事者(ファンドマネージャー)の知り合いに声がかかるケースが多い。
どういうポジションにあれば声が掛かるかというと、運用会社(外資系・国内系問わない)の運用部門にいる優秀なスタッフ、或いは、証券会社のトレーディング部門のトレーダー、あたりである。
②ヘッジファンドへの就職
もちろん、転職エージェントを通じたヘッジファンドへの就職というのも珍しくない。
ただし、通常の外資系運用会社への就職とは転職エージェントも微妙に異なっている。まず、おすすめなのは、エグゼクティブ・サーチ・ファームに登録することである。アメリカ或いはシンガポールで成功したヘッジファンドが日本でも拠点を設けるケースはしばしばある。そういう場合には、日本での起ち上げメンバーを集めるために、エグゼクティブサーチ・ファームを使うことが多いのだ。
具体的には、金融に強い、以下の2社には登録すべきだ。こういうところは以前は登録制ではなかったが、最近では、自ら転職希望者が登録できるようになっている。
<ハイドリック&ストラグル>
http://www.heidrick.co.jp/page/33/
<ラッセル・レイノルズ>
Leadership Advisory | Executive Search | Russell Reynolds Associates
また、通常の外資系金融に強い、比較的大手の転職エージェントでもヘッジファンドの案件を取り扱っているところがある。
以下の、マイケルペイジとモーガンマッキンリーの2社は、比較的ヘッジファンドの案件を取り扱っている。
外資系転職のマイケル・ペイジ | 世界大手の転職エージェント | 外資系求人5000件以上
Morgan McKinley : 外資系転職・国際的な人材コンサルティング会社
もちろん、ロバートウォルターズ、アンテロープなどの外資系金融に強いところは使うべきだし、ビズリーチ経由で中小の独立系エージェントからヘッジファンドの案件が紹介されるケースもある。
とにかく数を売っておくというのは、ヘッジファンドの場合も同様である。もっとも、リクルートとかJACはヘッジファンドにはあまりフォーカスしていないようだ。
最後に
リスクは高いが、成功した暁には桁違いに多額の報酬が得られるヘッジファンドには魅力がある。
バックオフィスの場合には、比較的低リスクで魅力的な報酬をもらえる場合もある。
情報が少ないので急に人気はでないだろうが、凋落してきている投資銀行と比べて妙味はあり、もう少し就職先として注目されてもいいのではないだろうか。