1. 年収3000万円で7時には余裕で帰れる?
外資系運用会社の夜は早い。だいたい夕方6時位になると帰り始め、7時位になると8割位は帰っている。その分、給料は外資系証券会社と比べて低い?
確かに、フロント部門で稼いでいる人は外資系証券の方が多い。とはいえ、VP(課長)クラスの30代でフロント職であれば年収2000万円、Director/SVP(部長)クラスの40代だと年収3000万円といったところが一般的な水準だろうか。
もちろん、Director/SVPクラスのフロント部門(特に営業)で稼ぐ人は5000万円以上もありうる。ただ、1億円というと滅多に聞かない。
こういう実態を知ると、外銀(外資系証券会社)志望の就活生は、運用会社についても関心を持つだろうか?
2. 運用会社の特徴
運用会社と証券会社の違いというのはピンと来るだろうか?名前の後ろに、「アセットマネジメント」とか「投資顧問」とつくのが運用会社である。
国内の大手金融機関グループは大抵1社は運用会社を持っていて、上の方は親会社である銀行や証券会社の元役員とか元管理職が天下っていて、若干マイナーな存在かも知れない。
しかし、ビジネスの本質はストックビジネスであって、フロービジネスの証券会社とは大きく異なる。運用会社の場合は、運用資産額(AUMという)さえあれば、そこに一定のフィーがもらえるので、たとえ何もしなくても、AUMさえあれば収入が入ってくる。この点、前の年に大儲けしても、何もしないと今年の収入はゼロになる証券会社と大きく異なるのだ。
また、営業活動は銀行や証券会社に委託して販売してもらうことが多いので、銀行や証券会社のような巨大な販売網を自前で抱える必要はない。
また、自己投資業務(プロップビジネス)を行わないので、銀行や証券会社のような巨額の自己資本を持つ必要も無い。
このため、以下のような特徴を持っている(全然MECEになっていないが…)
①日本で実質的に営業活動をしている会社数が多い。
日本で一定規模の営業活動を行っている外資系運用会社は、業界人なら誰でも知っているようなレベルで30~40社位ある。小さくても成功している会社を含めるとそれ以上の数になる。ヘッジファンドを含めると更に多くの会社がある。
巨大な販売網や資本金を必要としないビジネスモデルなので、活動できる会社数が多い。これは、転職における選択肢が多いということを意味している。
②外資系でも平均年齢が高い(年取ってもやっていける)
外資系証券会社は事実上定年が45歳と言われるし、実際、40歳以上の社員の比率は極めて低い。他方、運用会社の場合は、外資系の場合も平均年齢が高く、50歳以上は普通にいる。管理職の平均年齢が50歳を超えており、高齢化が問題となっている外資系運用会社もよく聞く話である。このように年取っても、働ける環境にあるが、若手は働きにくい。
基本的に新卒採用をやらないというのがあるが、20代だと本当にパシリというイメージで、30前半スタートというイメージである。
③はっきりとした業界内企業ランキングが無い
金融機関の場合、全般的に規模が大きい所が最もステイタスの高い企業であることが多い。証券なら野村、生保なら日生、損保なら東京海上、銀行なら三菱UFJ。
外資でもJPモルガン、ゴールドマンサックス、アクサというように、業界最大手がそれぞれのセクターでは強い。
運用会社の場合には、有力な会社が上場していないことも多いが、大きい会社=いい運用会社とは限らない。一人当たりのAUMとか一人当たりの利益が大きい会社の方が給与水準が良かったりもする。
規模だと、フィデリティとかブラックロックだが、ピムコとかWellingtonなんかの方が業界ではうらやましがられたりもする。
ヘッジファンドに至っては、成功している米国のヘッジファンドの日本拠点などは、信じられないような高額のサラリーを支払ったりすることもあるので、本当によくわからない。
外資系の運用会社は、こういった独特の世界なのである。
外資系運用会社の場合、新卒採用メインではない
外資系証券会社も20年ほど前は、今ほどトップ学生が殺到しなかったような気がするが、新卒採用を続けることによって、今では相当浸透してきている。
他方、運用会社の場合は、多くの外資系企業は新卒採用をしておらず、中途での入社が基本となっている。
このため、情報量が少なく、ますますマイナーな存在になっている。
外資系運用会社でのキャリアを形成するにはどうすればいいか
①王道は国内系運用会社に入ってから転職すること
運用会社の業務内容は、似たように見えるが、証券会社とは異なっているので、最初から国内系の運用会社に入社するのが一番堅い。
就職偏差値的には、証券会社コース別採用>運用会社、というイメージなので相対的に入りやすい。まじめに対応すれば、トップ学生であればどこかに入れるだろう。
対象となる大手の国内系運用会社は以下の通り。(※これ以外がダメと言うわけではありません)
〇野村アセットマネジメント
〇大和証券投資信託委託
〇大和住銀投信投資顧問
〇三井住友アセットマネジメント
〇アセットマネジメントOne
〇三菱UFJ国際投信
〇日興アセットマネジメント
〇東京海上アセットマネジメント
〇ニッセイアセットマネジメント
〇三井住友トラスト・アセットマネジメント
〇明治安田アセットマネジメント
②外資系運用会社への転職は可能か?
20代のVP未満の若手であれば可能である。
もっとも、30歳を過ぎれば業界を超えた転職と言うことになり、だんだんと難しくなっていく。
なお、運用会社の人間は、証券会社から運用会社に来るのは証券会社で成功しなかった人だという認識があるので、外資系証券会社出身者は暖かい目で見てもらえるわけではない。従って、面接で同じくらいのレベルの人が競うと、運用業界出身者に劣後してしまう点に留意しなければならない。
職種によっても違いがあり、株式、債券といったマーケット系や営業系は比較的入りやすいが、IBDに近い職種は無いので、厳しいかも知れない。
いずれにせよ、20代の若手であれば可能性はあるが、VPで30半ばになると容易ではなく、外資系証券会社をリストラされた場合の受け皿として期待しない方がいいかも知れない。
③外資系運用会社に転職する際の留意点
よく言われるのが、運用会社は業務的、雰囲気的にぬるいので、より厳しい業界には入りにくい体質になってしまう。
したがって、入社当時は「30歳になったら外資系運用会社に転職して稼ぐぞ!」と意気込んでいても、「もう面倒くさいから、このままでいいや。」となってしまうこともある。
それから、英語は必須である。国内系運用会社で英語を使う場面は少ないであろうから、20代のうちに頑張って英語力をつけておく必要がある。
TOEICだと900以上、最悪でも860以上あれば、何とか面接はできるのではないだろうか?
また、国内系の運用会社の場合、証券会社のようなコース別採用をやらないので、職種・配属に留意すべきである。
職種としては、株式にせよ債券にせよ、運用部門を希望するのが良い。そこから、商品企画になるにせよ、営業になるにせよ運用に詳しいというのが望ましい。
まとめ
就活生の間では、まだまだ外資系運用会社の実態については知られていないはずだ。将来が楽観できない外資系証券会社には無い魅力もあるので、トップ学生が検討する価値は十分にある業界だと思う。