Crooz小渕社長の新戦略「永久進化構想」の魅力と課題

Croozの「永久進化構想」とは
crooz.co.jp

Crooz(クルーズ株式会社)は、2018年5月に、100億円の企業を100社傘下に収めることにより、時価総額1兆円を目指すという、ユニークな「永久進化構想」を公表した。

上場ゴールの日本のベンチャー企業とは一線を画す?

1999年の東証マザーズ創設以降、アップダウンはあるものの、ベンチャー企業の上場企業数は増えた。

しかし、問題は上場したもののそこから巨大企業に成長するケースは極めて少なく、日本の産業界を牽引するような企業が出てきていないのが問題である。

確かに、楽天、ヤフー、LINE、ZOZOと時価総額1兆円越えの企業もあるが、GAFAやアリババのような国レベルの経済界を買えるような数十兆円クラスの企業は一切でてきていない。

それどころか、当初は期待されながらも1兆円に到達しないベンチャー企業がほとんどである。

サイバーエージェント、DeNA、グリー、ガンホー、コロプラ、クックパッド、ミクシィはベンチャー企業のようでベンチャー企業でない?

これらの企業を失敗事例というのは些か乱暴であるが、時価総額が1兆円を超えることはないだろう。

利益は1000億円レベルに到達し、人材も外コン、外銀、新卒は東大生が多数入社するにもかかわらずである。

その理由としては多数考えらえるが、少なくとも言えることは、報酬体系、インセンティブにおいて明らかにベンチャー企業ではないからである。

せいぜい銀行員レベルの報酬体系において、大規模化してしまった組織において、寄らば大樹的な人材が集まってしまえば、そこから新しいビジネスは生まれないだろう。

何故か今でもトップ学生から人気が高い「上場」ベンチャー企業

不思議なことに、こういった既上場の大手ベンチャー企業は、待遇面においては金融・商社・インフラには劣るが、東大、早慶を始めとするトップ学生から人気がある。

何故か?それは「新規事業」を経験できるからである。

最難関の外コンや外銀に入れる自信はないが、金融や商社では物足りないというカテゴリーの学生が「新規事業」というマジックワードに惹かれて来るのだ。

「新規事業」というのはコンサルっぽく、自分も将来は企業内起業をしたり、外部企業に投資をしたりといった「夢」があるのだろうか。

無リスクで数億円を元に和気藹々で始める新規事業は起業というより、起業ごっこである。

考えてみれば当然かも知れないが、既上場の大手ベンチャー企業の潤沢な資金で、社内承認が下りれば数億円規模で、多数のスタッフが共同して始める新規事業は、起業とはほど遠いもので、「起業ごっこ」というレベルのものであろう。

実際、サイバーエージェントも「じぎょつく!」で成果が上がらず廃止してしまったことからも、このリターンが無い代わりにリスクもない社内起業が成功するわけないことは明らかである。

大手ベンチャーのスタッフが優秀でないということではなく、適性が異なるということ

これは、外コンや外銀、新卒のトップ学生達の能力が低いというのが原因ではなく、単に、既存のローリスク・ローリターンの社内起業制度とはマッチしない、適性が異なるということである。

ピーター・ティールのゼロトゥワンではないが、「0⇒1」と「1⇒10」とでは、求められる資質が異なるわけで、外コンや外銀が得意なのは「1⇒10」の方で、「0⇒1」ではないのだ。

社内起業ができる適性を持つ人材は、既上場ベンチャーには行かない

それでは、既上場の大手ベンチャーはハイスペック人材ではなく、起業に適した「0⇒1」型の人材を採ればいいということだが、そういうわけには行かない。

何故なら、アベノミクス経済における好況下、ベンチャーファイナンス的には金余りの状況にあり、イケてる起業家にとっては、自らVC出資を受けて起業した方が手っ取り早いからである。

銀行員程度の報酬体系で、ハイスペックな同僚と一緒に窮屈な起業をしたいとは思わないのだ。

自由で報酬青天井のCroozの「永久進化構想」は、既存の大手ベンチャー企業の「社内起業制度」とは一線を画する画期的なシステムである。

Croozの「永久進化構想」は、上記のようなセコイ中途半端な、いかにも日本的な「起業ごっこ」とは異なる、自由で大胆なシステムである。

これは、オーナー社長であり、ゲーム事業売却に伴う潤沢な資金(約100億円)を有するCroozだからこそできるユニークな戦略である。

また、自由と報酬だけでなく、ヒト(特にエンジニア)、モノ(オフィスとかの物的環境に加えてCroozのノウハウと信頼といったソフト資産も)、カネといったインフラを活用できるというメリットまである。

CVC、VCとはどう違うのか?

そもそも、日本のコンサバな事業会社が予算消化的な意味合いで行うCVCとは全く異なる。東急、三菱地所、ニコン、学研等がCVC事業を行っているが、企業規模と比して、少額のCVCファンドを作ってはいるが、株主向けの対応策の一つであろう。

他方、VCについては類似している点もあり、Sevenwoods Investmentというシードにフォーカスした社内VCを設立したし、投資対象にシナジーという制約は無いので、VC的ではあるだろう。

もっとも、VCとは異なり、Croozの場合には裏の投資家がいないため、2つの点で自由度が高いと言える。

一つ目は、ファンドサイズの制約が無いので、小さくとも収益率が高いシード/スタートアップ、アーリーステージに遠慮なくフォーカスできることである。

このため、無理やり投資単位を上げることに伴う投資収益率の低下を防止することが可能となる。

二つ目は、期間の制約が無いため、上場後すぐに大半を売却する必要性はなく、メルカリのような大ホームランが出ると、継続して保有し続けることも可能だ。

早くも成果が表れてきている…

このような魅力を備えた「永久進化構想」については、インキュベイトファンド出身の若手ベンチャーキャピタリストや起業家が合流するなど、早くも成果が出てきている模様だ。

課題としては、「100億円」が難しい

もっとも、大変期待されるシステムなのであるが、課題もある。

その一つは、「100億円」企業を1つ作るのは現状だと大変だということだ。

例えば、2018年上期(1~6月)には36社上場し、東証マザーズには26社上場した。

しかし、設立後5年以内の企業はわずか2社/26社であり、10年超が18社/26社もある。

(これは、過去の不祥事等の負の遺産により審査が長期化・厳格化しているのが問題であろうが)

さすがに、こんなに悠長に待って入られない。

100億×100社というと、ぱっと見、可能性があるようにも見えるが、実は「100億」というのが相当ハードルが高いのである。

ある意味、10億×1000社を目指す方が早道かも知れない。

10億×1000社じゃオペレーションが回らないが…

もちろん、10億×1000社というのは現実味を欠くが、ただ、10億円でもとりあえずOKというスタンスで初めて、その中から結果的に100億企業が生まれるという発想なら可能であろう。

「永久進化構想」とCroozのインフラからだと、10億円企業を作るのはそれほど難しくかも知れない。

となると、実は、必要となるのは小規模な数十億程度の企業や事業を即座に売却でできるオペレーション、M&Aチームなのかも知れない。

昔もてはやされたシスコシステムズのような、仕組みが有用なのかも知れない。

成功のループを作りたい

個人の場合、ゼロから1億円を貯めるのは難しい。他方、1億円が貯まれば、そこから5億に持っていくのは、いろいろな打ち手が可能となり、成功体験とも相まって、1億貯めるよりも遥かに早道であることが多い。

さらに、一旦5億にしてしまえば、10億にすることはもっと容易だ。

成功が重なると、ますます成功が加速して、あっという間に大富豪ということになってしまう。

例は良くないかも知れないが、与沢翼氏などは、一旦成功すると、そこからフローとストックの両面から攻め立て、あっという間に上り詰めることが得意だ。

blacksonia.hatenablog.com

「永久進化構想」でも、このパターンは使えるだろう。

すなわち、企業売却で10憶円位の利益を出すことは可能だ。その場合、その利益を本業のECに突っ込むだり、ゲームに突っ込んだりして、或いは既存の企業の買収に使うなど、フローとストックの両面に投資をしていくべきではないだろうか。

カギになるのはEC(ショップリスト)とゲーム

現実的に考えると、ホームランを生み出せるのは既存のこの2事業に関する投資ではないだろうか?他のVCには無いノウハウがあり、ビジネスを知っている同僚が企業内にいるのである。これを利用しない手はない。

他方、フィンテック(仮想通貨とか決済関係)関係のところは、特段の強みが無く、ホームランは出にくいし、打率も劣るのではないだろうか?

もっとも、「永久進化構想」は自由度が高いので、フィンテックでも面白いと思えば早期に投資をして、早期に売却すればOKである。

小渕社長がゲームを売り切らずに残したところが面白い

実は、一番可能性があって面白いと思われるのはゲーム関連である。

何故なら、ヒットが出にくくなり、コストが上がったと言われるゲームビジネスであるが、何といっても当たった時のインパクトはAIの比ではない。

1タイトルだけで、時価総額5000億円となってしまう。

実は、5億無くてもパズドラ/モンストは生み出せる

新規のスマホゲームは開発費と広告宣伝費が高騰し、1タイトル開発するのに5億円近くもかかるということだが、それは本当であろうか?

そもそも、現在でも2強を占めるパズドラもモンストも、開発費はそれほどかかっていないし、期間もかかっていない。しかし、今でも開発費をかけたゲームに圧勝している。

ゲームのユーザーが求めているのは、画像の鮮明さでも無いし、広告宣伝でも無い。

単に面白いゲームがやりたいだけだ。

パズドラとモンストのユーザーは、ある意味、他に面白いゲームが無いから仕方なく続けているだけであって、新しくて面白いゲームがあればそちらに移りたいのだ。

だから、開発費を掛けない画期的でシンプルな仕組みのゲームがひょっこりでてきて、根こそぎゲームの収益をかっさらっていく可能性は十分あるのだ。

「永久進化構想」が面白いのは、既存のECやゲーム事業と、外部の経営人材が出会い、突然化学反応を起こす可能性があることだ。

ゲームなんてコロンブスの卵的な発想で、突然ヒット作が生まれる可能性があるものだ。そういう出会いが生まれることを期待したい。

まとめ

公表されてから半年も経っていない「永久進化構想」であるが、早くも動き始めている模様だ。運営していく中で、いろいろな展開があるのだろうが、日本のベンチャー業界を画期的に変革する潜在力を有する面白い仕組みだと思う。

それに反して、まだ注目されていないところがいいと思う。成功し始めると、すぐに他のベンチャーは模倣するだろう。

それまでに間に、ノウハウを築いて、他が安易に追随できないような仕組みとなるよう期待したい。

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