1. 年収1000万円超でも貯金はゼロの証券マン
大手証券会社勤務のAさんは40歳の時、年収は1300万位あったが、何と貯金はゼロ(厳密にいうと100万円未満)であった。もちろん、他に公社債とか投資信託は持っていないし、株式も保有していない。
何故こんな状態になっているのかというと、Aさんは割と派手に飲むのが好きで(証券マンにありがちだが…)、給料は少なくないが、月の飲み代は高かった。また、飲んだ後にタクシーで帰り易いところということで、都心の近くにマンションを借りていたので家賃負担も高かった。そして、決定的なのが、数年前に離婚したため、まとまった金額(財産分与)が出て行ってしまったからだ。
2. しかし、40歳になって、このままではマズいことを意識した
このように、全然貯蓄ができないAさんであったが、40歳の誕生日を迎えるにあたって、このままで問題だと認識し始め、1000万円の貯金を目標にすることとした。
3. 1000万円の貯金を決意してから、6年強で実現
40歳時点で貯金はほぼゼロであったAさんが、本気になって貯め始めると、わずか6年強で貯金(正確には銀行預金ではなく金融資産であるが)1000万円を達成することができた。
Aさんは証券会社勤務だが、株式運用やFXで一発当てた訳ではない。誰でも実行可能なシンプルな方法でこれを実現したのだ。
その方法のポイントは以下の3点。
(1)毎月10万円を貯蓄のために捻出する
(2)毎月捻出した10万円を全て投資信託に積立投資をする
(3)毎回ボーナスからは10万円を貯金する
①毎月10万円を貯蓄の為に捻出する。
Aさんの年収は約1300万円である。ファイナンシャル・プランニング的には、これぐらいの年収であれば、額面年収の2割位を貯蓄に回すことが望ましい。もちろん、そんなことはAさんは十分把握していたが、散財生活から2割の貯蓄をするのは続かないと考え、額面年収の1割の貯蓄をすることとした。毎月の給与から10万円、年2回の賞与からそれぞれ10万円を貯蓄に回すと、10万円×12+10万円×2=140万円となる。年収1300万円のほぼ1割だ。
ここでのポイントは、ダイエットと同じで、いきなり焦って高い目標を設定しすぎないということである。証券会社の場合は、比較的ボーナスの割合が高いので、毎月10万円を貯蓄に回すことによって赤字が出たとしても、ボーナスで補填すればOKとした。ボーナスは10万円だけ貯蓄に回せばよいので、それほどストレスは溜まらなかった。
②毎月捻出した10万円を全て投資信託で積立投資を行う
Aさんは証券会社勤務なので、運用知識を駆使して、株式、FX、仮想通貨等の投資で勝負した方がいいのではと思う人がいるかも知れない。しかし、証券会社や運用会社の人は、そんなに簡単に株式投資で儲けることはできないということは良く知っている。このため、手堅い教科書的な方法を選択したのである。
FPの教科書に載っているような、ドルコスト平均法を利用した国際分散投資の実践である。投資対象はシンプルに、外国株式型の投資信託に5万円、外国債券型の投資信託に5万円とした。
この点、ETFを使った方が運用コストを低く抑えることができるのではないかという疑問が生じるかも知れない。確かにその通りであるのだが、Aさんは証券会社勤務であるため、ETF投資に際しては会社の承認を取らないと行けないため、契約型の投資信託に投資をすることとした。(なお、証券会社の社員でも会社の承認をもらえばETF投資も可能なのだが、社内手続きが面倒だと感じてやらないケースも多い。)
そういった業界/社内ルールにおける投資の規制が無い場合には、ETFを使って低コストで運用するのが良いかと思う。
Aさんは、この積立投資の結果、6年強で約860万円を貯めることに成功した。ちなみに、その後もAさんはこの積立投資を継続している。
この積立投資は手堅い運用方法であるが、どれくらいの資金を、どれくらいの期間、どれくらいの平均利回りで運用すればいくら貯められるかは、こういったシミュレーションのソフトを使って計算すれば良いだろう。
<積立シミュレーション>
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/smartphone/saving/simulation/
③毎回ボーナスからは10万円を貯金する
上記②の毎月10万円の積立投資を6年強続けることによって、Aさんは約860万円を貯めることができた。
それに加えて、6年間の間にボーナスが12回(2回×6年)あり、それぞれ10万円以上を貯金に回したので(こちらは流動性確保のため普通預金に回した)、これで120万円。さらに、ボーナスで10万円以上貯めることができた金額が少しあったので、860万円+120万円+20万円で1000万円の貯蓄を作ることに成功した。
サラリーマンの場合、年2回のボーナスがあるので、ある意味、ボーナスが無い自営業者よりは貯めやすいとも言える。すなわち、給料とは別にボーナスが支給されると、普段の生活はなるべくその月の給料の範囲に抑えようという心理的な効果が働くため、ボーナスはある程度まとまった金額が残ることが多いからである。
もちろん、証券会社の場合はボーナスの年収に占める割合が多いので、月々の給与は年収水準と比べて低く感じられる。ここでもストレスを感じないようにするため、1回のボーナスでは10万円を残せばOKとしたことがポイントである。
まとめ:無理をせずにコツコツ積立を続けること
証券会社のAさんが約6年強で1000万円の貯蓄に成功したポイントは、とにかくコツコツと継続することである。そのためには、無理をし過ぎず、また、途中で貯蓄を使わないようにする必要がある。
運用能力というのは、意外と重要ではない。実際、Aさんのケースでも1000万円到達時には投下した金額は、月々の積立が740万円(10万円×6年2か月)、ボーナスからの貯金額合計が140万円である。従って、運用による収益は、1000万円-740万円-140万円=120万円と12%のみである。もちろん、これだけ低金利の状況下、運用収益が乗っかるのは重要であるが6年強の期間だとこの程度である。仮に全て定期預金に回していたとしても、880万円貯まっていたわけである。
このため、欲を出して投機的なことをしないほうが手堅く貯めることができる。運用によって資産を増やそうというのは、元本がせめて3000万円とか5000万円位貯まってから考えればいいだろう。
月々一定額を決めて、積立投資をする。これだけの方法で特に専門的な知識は必要でない。あとは行動できるかどうかだけである。